2011 Fiscal Year Research-status Report
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23540071
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
稲葉 尚志 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40125901)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 積分不可能平面場 / エントロピー |
Research Abstract |
まず,積分不可能平面場に対するエントロピーの定義について考察した.力学系や葉層構造において既に与えられている定義を逐語的に積分不可能平面場に援用すると意味のないものになってしまうことを最初に確認した.そこでまず2つの水平曲線間の距離を微分係数の違いを込めた形で定め,分離可能な水平曲線の本数の増大度を用いて新しいエントロピーを定義した.そしてこの新定義が有効であることを示すことを目標とした.今年度は非自明例を挙げることはできなかったが,いくつかの平面場に対して消滅定理を証明することができた.第1の結果として全ての接触平面場に対してそのエントロピーは消滅することを示した.第2の結果として接触平面場の延長として得られるエンゲル平面場に対しても消滅することを示した.更に一般に,Dがブラケット生成的平面場であって,Dに横断的なD-保存ベクトル場を沢山許容するならば,Dのエントロピーは消滅することを示した.これらの消滅定理の証明にはD-保存ベクトル場の存在が不可欠である.次に,D-保存ベクトル場の存在に頼らない消滅定理を得るために,水平曲線間の距離を定義する際,曲線の曲率の違いも考慮に入れた第2のエントロピーも導入した.このエントロピーについては次のD-保存ベクトル場の存在に頼らない消滅定理を得た.平面場Dが性質Nと性質Aを満たすならばこのエントロピーは消滅する.ここに性質Nとは水平曲線の到達可能集合が終点の近傍をなすことであり,性質Aとは到達可能集合の点へ至る摂動曲線が元の曲線と近い距離にとれることである.以上の結果は今年度秋に東京大学玉原国際セミナーハウスで開催された研究集会において発表した.また,これらの研究の過程での副産物として,法方向に縮小するリー群作用の非存在に関する結果を得て,論文として出版した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目標として掲げた3つの課題のうち,エントロピーに関する課題について進展が得られたため.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,非自明エントロピーの例を見つけたい.更に,研究目標として掲げた残りの2つの課題についても考察を進めたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の推進にあたっては,関連する研究をおこなっている研究者たちとの研究連絡や研究集会での情報収集が不可欠であり,このために,旅費を使う計画である.また,研究の幅を広げるために種々の専門書の購入も行う.
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Research Products
(2 results)