2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540071
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
稲葉 尚志 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40125901)
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Keywords | 積分不可能平面場 / エントロピー |
Research Abstract |
前年度に続き,積分不可能平面場に対するエントロピーの定義について検討を行なった.この方向の研究としては,最初にA.Bis(2005)が出版され,最近N.T.Zung(2011)が出版された.エントロピーをBowen流に定義するには,まず多様体上の2点がそれぞれ平面場に接しながら動いていくときの両者のseparationについての定義が必要となる.上記2論文ではそれを単にt秒後の2点間の距離で測っているため,bracket generatingな平面場に対しては,Chowの定理により,常にエントロピーは消滅してしまうことになる.本研究では,t秒後の2点の距離に加えて,その時刻における2点の動きの速度ベクトル同士の角度も考慮した距離を使ってseparationを定めることにより,容易にはエントロピーの消滅が示せない定義とした.この定義の下で非自明エントロピーを持つbracket generating平面場の例を発見すべく研究を続けているが,見つかっていない状況である.Separationの定義は,エントロピーの定義に必要であるのみならず,それ自体としても,力学系的観点から有用な概念である.そこで,一旦エントロピーから離れて,2点のseparationの問題を独立に考えることも行なってみた.すなわち,ある多様体上にbracket generatingな平面場が与えられたとき,正定数Cを固定し,C-separatingな2点は存在するか? 或いは,対照的な問いとして,正定数Cが存在して,多様体上の任意の2点がC-separatingであるようなbracket generatingな平面場は存在するか? 等の問題を研究対象として設定した.これらについても今年度中には解決に至ることはできなかった. しかし新しい問題設定も行なったので,次年度の研究に繋がるものと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
積分不可能平面場に対するエントロピーの定義についてはかなり考察が進んだが,その定義のもとで,エントロピーが非自明になる例をまだ見つけることができていないため,まだ論文としてまとめる内容に到達していない.当初の研究計画に照らすと進行がやや遅い状態である.
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Strategy for Future Research Activity |
論文として完成させるために,非自明エントロピーの例を見つけることに全力を注ぐ予定である.また,それが研究期間内に達成できなかった場合のことも考えて,本研究で定義したseparationの概念に関する力学系的問題についても新知見を得るべく研究する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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