2011 Fiscal Year Research-status Report
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23540072
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今野 宏 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (20254138)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | シンプレクティック幾何 |
Research Abstract |
旗多様体の幾何学的量子化,特に複素偏極と実偏極の関係をM.Hamilton氏と共同で研究した.トーリック多様体についは,実偏極を複素構造のある特殊な極限として理解できることが知られているが,旗多様体に対する類似の結果を証明した.すなわち,旗多様体のシンプレクティック構造を固定したときに,それと両立する複素構造の族で,前量子直線束の正則切断が,実偏極の定めるラグランジュ部分多様体に台を持つデルタ関数に収束するものを構成した.これは複素偏極が実偏極に量子論的に収束することを意味し,代数幾何における複素多様体の退化のシンプレクティック幾何における類似物と考えられる.前年度までに理論の大枠はできていたが,正則切断がデルタ関数に収束することを示すためにさまざまな量の精密な評価を行う必要がある.この評価を改良して,論文 Convergence of K\"ahler to real polarizations on flag manifolds としてまとめた.(学術雑誌に投稿中,arXive で閲覧可能)9月に中国(天津, Chern 研究所)で開催された量子化に関する国際研究集会において上記の結果についての招待講演を行い,研究会の参加者とさまざまな有益な議論,情報交換を行った.また,11月に香港中文大学に招待されて,Leung, Chan, Wu 氏らこの分野の専門家たちと徹底的に議論を行い,今後の研究の新たな方向性を見出すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の複素偏極の実偏極への量子論的な収束を定式化して証明するためには,シンプレクテイック幾何の対象と複素幾何の対象のさまざまな同一視を行って,その同一視の方法の変化の様子を評価付きで記述する必要がある.同一視の方法も微分方程式の解として記述されたり,特異点が現れたりするので,変化の様子の評価は大変複雑になる.この評価を完成させることができたのは大きな成果であった.幾何学的量子化の研究に多くの時間を費やしたため,ハイパーケーラー商のトポロジーについては,大きな進展はなかった.10月に中国科学技術大学(中国,合肥)に招待されて,ハイパーケーラー商のトポロジーに関する連続講演(120分講演を4回)を行った.この分野の若手研究者とさまざまな議論をして,今後の研究課題を探ることができた.以上のように幾何学的量子化については十分な成果をあげたが,ハイパーケーラー商のトポロジーについてはそうではなかった.総合的にはおおむね順調と考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
実偏極を複素偏極の極限と捉える考え方は,代数幾何における複素構造の退化の理論のシンプレクティック幾何的における対応物と考えられる.実偏極はラグランジュ部分多様体によるファイブレーションのことであるが,ミラー対称性においても,複素構造の最大退化点の近傍でラグランジュファイブレーションが現れる.これらの関係や,これに関連して現れるラグランジュ部分多様体の性質を調べる.また,実偏極を複素偏極の極限と捉える考え方と表現論における標準基底,結晶基底の理論の関係もを調べる.トーリックハイパーケーラー多様体のトポロジーを調べるために,ハイパーケーラーモーメント写像のノルムの2乗をモース関数としてモース理論を適用してベッチ数やコホモロジー環を決定する.さらに,これとメビウス関数との関係を調べる.また,このアイデアをトーラスによるハイパーケーラー商のトポロジーの一般論に深化させるために,別の(ある特別な)モース関数の臨界点と上記のモース関数の臨界点の関係を調べる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
さまざまな分野の研究者との交流が必要なため,旅費の占める割合が7割以上となった.微分幾何学,シンプレクティック幾何学に関する研究会を中心に出席する予定である.代数幾何学,トポロジー,表現論等の研究会もトピックによっては出席する可能性がある.研究費の中で2番目に多いのが物品費で,1割を少し超えるが,主に書籍の購入に使用する予定である.
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Research Products
(2 results)