2013 Fiscal Year Research-status Report
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23540072
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
今野 宏 明治大学, 理工学部, 教授 (20254138)
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Keywords | 微分幾何学 / シンプレクティック幾何学 |
Research Abstract |
シンプレクティック多様体にコンパクト群の作用があるとき,多くの場合にモーメント写像が定義される.また,コンパクト群の作用はその複素化の作用に拡張され,群作用に関して,安定,半安定,不安定な点などの概念が定義される.モーメント写像は,この群作用に関する安定性の理論を深く関わる.この現象は群が無限次元の場合に成り立つことがしばしばあり,微分幾何学の諸分野で,多くの指導原理,作業仮説を与えている.リッチ平坦ケーラー多様体内のラグランジュ多様体の平均曲率流の収束性は,このひとつの例であることが10年ほど前から知られていたが,多くの技術的困難のため,あまり進展がなかった.昨年秋聞いた講演は,この分野に新たな進展を報告するものであり(プレプリントは先月公開されたばかりである.),その調査,研究を開始した.ラグランジュ部分多様体の安定性に関してはまだほんのわずかしか理解されておらず,さまざまな実例で多くの現象を実際に観察することが必要である.実例を構成するために,私が今まで研究してきたハイパーケーラー商が有効であると考え,現在実行中であるが,まだ,まとまった成果は出ていない. 量子化の研究については,Hamilton 氏との共同研究の結果をまとめて投稿中であったが,レフェリーから修正を依頼され,それを完了させた.その結果,Journal of Symplectic Geometry に掲載されることが受理された.具体的に第何巻に掲載されるかなどの情報は出版社からの連絡を待っている状態である. 東京大学出版会から「微分幾何学」を出版した.(単著,277ページ)この本の最終段階の執筆および校正に多大の労力を使った.この本は,今までの研究を通して得られた知見などを社会に還元するという願いをこめて執筆した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子化の研究については,Hamilton 氏との共同研究の結果をまとめて投稿中であったが,レフェリーから修正を依頼され,それを完了させた.その結果,Journal of Symplectic Geometry に掲載されることが正式に決定され,研究はひとまず決着がついたということは大きな成果であった. 書籍「微分幾何学」の最終段階の執筆および校正に予想以上の労力を使い,そのために研究の予定が遅れたことは否定できない.けれども,この本の執筆の目的は,今までの研究を通して得られた知見などを社会に還元するということもあり,我々の責務であると考えている.紆余曲折はあったが,とにかくこの本を完成させ,出版することができたことは大きな成果であった. 一方で,昨年度は,ハイパーケーラーKirwan写像の全射性が我々のめざしていたものとは異なる方法で証明され,ラグランジュ平均曲率流の研究にブレイクスルーがあるなど,我々の研究分野において急激な変化があった.この激変の中で生き残るために,下記のように研究計画の修正が必要であると考えた. 以上のように,順調に進展した部分とそうでない部分が混在しているが,総合的には上記の評価にしてよいのではないだろうか.
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Strategy for Future Research Activity |
研究の方針について修正が必要である.ハイパーケーラー商のトポロジーを調べるためにハイパーケーラーKirwan写像の全射性をハイパーケーラーモーメント写像を用いたモース理論により証明しようとしていたが,圏論,D加群などの我々がめざしていたものとは全く異なる方法により証明された.モース理論により示すことができれば,ハイパーケーラーKirwan写像の全射性だけでなく核についての情報が得られる期待があるため,依然としてモース理論による研究は継続するが,研究の動機が減少したことは否定できない.ラグランジュ平均曲率流は昨秋ブレイクスルーがあった新たな課題である.この研究のために,今まで研究してきたハイパーケーラー商は重要な役割を果たすと考えられる.しかも,安定性という共通のものが主題となるので,今までの研究を全面的に生かすことができる.そのため,ラグランジュ平均曲率流を研究計画に加えたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者は2013年4月から研究機関を東京大学大学院数理科学研究科から明治大学理工学部に異動した.異動するにあたって,さまざまな仕事が発生して研究に避ける時間と労力が一時的に減少したこと,また,スケジュールがあわず出張ができないことが数回あった.研究費の約70パーセントを旅費として予定していたが,上記の理由で出張することが難しいことがあったため,その分の研究費を次年度に繰り越した. 前年度に引き続き,研究費の70パーセント近くを旅費として予定している.昨年度の経験をふまえ,可能な限り綿密なスケジュールの調整を行った.8月には,ソウルへの海外出張(ICM2014に参加),名古屋への出張(幾何学シンポジウムに参加)等を計画している.
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Research Products
(2 results)