2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540083
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
糸 健太郎 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (00324400)
|
Keywords | 双曲幾何 / クライン群 / リーマン面 |
Research Abstract |
私の専門は双曲幾何である.双曲空間の自己等長写像群の離散部分群をクライン群というが,このクライン群の変形空間について研究している.クライン群の変形空間は商多様体の理想境界に現れるリーマン面の変形空間(タイヒミュラー空間)と対応しており,私はこの対応の境界における連続・不連続性に興味を持っている.とりわけ,曲面群と同型なクライン群(擬フックス群)が主な研究対象である. 擬フックス群空間の境界挙動を研究するために,曲面に付随する様々な幾何構造(測度付き葉層構造,複素射影構造,測地線流などなど)が重要となってくるが,本年度は現在の私の知識が不足している部分の補充に力を入れた.特に測度付き葉層構造に関する勉強会を開催し,これを用いたタイヒミュラー空間のサーストン・コンパクト化の詳細を理解した.さらに,このサーストン・コンパクト化のボナオンによる測地カレントを用いた特徴付けをヒントに,測地カレントを複素化した空間に擬フックス群空間や複素射影構造空間を埋め込むことの可能性についての研究を開始した.これは複素射影構造空間の自然なコンパクト化を得るための試みである.また,リーマン面上の測地流,接円流や測地カレントについての文献に広くあたった.測地流や測地カレントは双曲空間の双対空間としてのドジッター空間において論じることができるので,この観点から一般次元ドジッター空間へのクライン群の作用に関して,幾つかの問題を考察した.具体的には3次元ドジッター空間へのココンパクトなクライン群の作用を考えたとき,稠密な軌道が存在するかどうかを考えたが,決定的な結果には至らなかった.この問題を考える背景には,もう一つの動機があり,それはユークリッド空間におけるペンローズ・タイルの双曲空間におけるアナロジーを考えたいというものである.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度までの手法のこだわっていたでは,長い目で見たときにやや先細りの心配が出てきたので,研究の知識や手法の幅を広げるべく努力を始めた所である.しかし,その知識を実際の研究に活用出来るようになるまでには,当初の予定よりは多少時間がかかりそうである.
|
Strategy for Future Research Activity |
測地カレントを複素化した空間に擬フックス群空間や複素射影構造空間を埋め込むための研究を行う.また,ドジッター空間へのクライン群の作用について研究する.また,ローレンツ多様体の変形と複素射影構造の変形は対応があるので,この対応を通じて複素射影構造空間についての新たな知見を得るべく模索したい.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
差引額1万3千円余りは,年度中に無理して使うことなく,繰り越して次年度に有効活用することにした. 研究用の図書を購入する.
|
Research Products
(3 results)