2011 Fiscal Year Research-status Report
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23540087
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
小池 敏司 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (60161832)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | SSP幾何学(オーストラリア) / 曲率集中化問題(オーストラリア、フランス) |
Research Abstract |
部分解析的集合の実接錐の共通部分の次元はリプシッツ同相写像のもとに不変であることを、数年前に、オーストラリア・シドニー大学の Laurentiu Paunescu 教授と共同で示した。その証明の中核をなすアイデアの一つが点列選択性性質(Sequennce Selection Property)という概念の導入にあった。本研究の主目的の一つは、この点列選択性性質を持つ集合の幾何学を構築することにあった。特に、本年度に計画していたのは、その幾何学を展開していく上で必要となる、基礎になることがらを証明することにあった。本年度は、Paunescu 教授との相互訪問を通した共同研究のもとに、上記実施計画に基づき、点列選択性性質のカテゴリーにおける集合論的演算(特に、共通部分や直積集合に関する演算)の証明、グラフが点列選択性性質を持つリプシッツ同相写像による「点列選択性性質構造保存定理」の証明、リプシッツ同相写像による「特異点を持つ集合の横断性保存定理」の証明や、それらの成果の複素特異点論への応用についてもいくつかの結果を示した。また、より容易に判別できる条件として、半直線点列選択性性質の概念を導入し、もとの点列選択性性質との相互関係についても議論を行い、それについても成果を得た。以上の成果をまとめて、Paunescu 教授との共著論文を一つ書き上げ、雑誌に投稿している。また、それらの成果は、特異点論や幾何学のセミナーにおいて発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
点列選択性性質を持つ集合の幾何学の基礎付けについて、当初、証明しようと計画していた種々の性質、定理を証明することができた。特に、「点列選択性性質構造保存定理」については、予定していたもの以外にも、それとは異なる仮定による構造保存定理も証明することができた。更に、次に進むステップとして、それら2種の仮定を含む一般的な仮定のもとでの「点列選択性性質構造保存定理」を定式化することができた。また、上記に述べた結果を、思っていたよりも早く示すことができたので、共著論文としてまとめて、ジャーナルに投稿することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の中心課題は二つあり、一つは「点列選択性性質を持つ集合の幾何学の研究」であり、もう一つは「解析関数の特異点の周りでのレベル集合の曲率集中化の特徴付けの研究」である。次年度に主として計画している研究は、後者の方である。こちらの研究については、本研究課題を始める前より、オーストラリア・シドニー大学の Tzee-Char Kuo 教授、並びに L. Paunescu 教授と共同で研究を始めており、その特徴付けの候補としては、「解析関数の勾配についての Lojasiewicz 不等式から定義されるキャニオンに関する条件」、「Newton-Puiseux 展開から導入される無限小に関する条件」、「実ツリーモデルに関する条件」を掲げている。これらの研究を進めていくために、研究代表者のシドニー大学訪問、Paunescu 教授の兵庫訪問などを通しての共同研究を行う。また、実ツリーモデルの概念を一緒に導入した、フランス・ニース大学の Adam Parusinski 教授の兵庫訪問を通し、三番目の特徴付けのための有意義な議論を行う。これらのことを通して、曲率集中化の特徴付けの研究を推し進めることを計画している。更に、後者の研究と並行して、前者の研究についても、複素特異点論への応用や、大域的結果の定式化について、気を配っておく。次々年度は、前者の「点列選択性性質を持つ集合の幾何学の構築」に向けた研究に立ち戻り、点列選択性性質のカテゴリーにおける大域的研究を、上記の外国人研究者達と行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の大半は旅費にために用いられる。特に、上記に述べた共同研究のための研究代表者のシドニー大学訪問と、フランス・マルセーユで開催される特異点論の国際研究集会で本年度に証明した成果発表のために、外国旅費を用いる。また、特異点論研究の大きなグループがある北海道大学を訪問し、成果発表と助言を受けるために国内旅費を用いる。研究に必要となる資料のコピーや研究成果印刷のために必要となるコピー用紙購入のために、消耗品費を用いる。
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Research Products
(7 results)