2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540090
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
阿賀岡 芳夫 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50192894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田丸 博士 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50306982)
澁谷 一博 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00569832)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 共形構造 / 平坦 / リー群 / 左不変 / 不変式 / 射影構造 |
Research Abstract |
研究初年度である今年度は、リー群上の左不変で平坦な共形構造について研究を行った。このような幾何構造とリー環のある種の条件を満たす準同型写像との間には1対1の対応が存在していることが知られている。この条件を満たす準同型が存在するための必要十分条件(存在・非存在を判定するアルゴリズム)について、射影構造の場合には100%満足できる結果が既に得られているが、同様の条件を共形構造の場合に求める研究を行った。現時点では、必要十分といえる条件にまでは至れていないが、存在のための必要条件を種々求めることができた。(表現行列と可換な行列の固有値の符号を調べることにより、必要条件が得られる等。)更にこの条件を用いることにより、いくつかの半単純リー群に対し、不変で平坦な共形構造の存在しないことを示すことができた。ただし、今回得られた条件だけでは十分性が成り立たないので、更なる必要条件を見出す必要があり、これは次年度以降の研究課題として取り組む予定でいる。 平坦な射影構造の場合には、この幾何構造が存在すればある種の不変式が必ず対応して存在することが知られていた。同様の現象が平坦な共形構造の場合にも成り立つことを示すことができた。共形構造の場合には、射影構造の場合に比べモデル空間のリー環の構造が複雑であるため、不変式の構成法はやや複雑なものとなった。またこの不変式の因子と、共形構造の下部幾何構造(例えば定曲率リーマン計量)との関連について研究を行った。射影構造の場合と同様、この不変式は特別な形の因子をもつことを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種々ある幾何構造の中で、今年度は共形構造に焦点をあてて研究を行った。当初から予想されたことではあるが、共形構造の場合は射影構造に比べモデル空間のリー環の構造が複雑であるため、存在・非存在を判定するための条件を見つけることにはある種の困難が伴った。しかし、具体的なリー群に対しても判定可能な必要条件を複数見出すことに成功し、十分性の判定までが可能となる地点に肉薄できたものと考えている。また、平坦な共形構造に付随する不変式の研究に関しても、射影構造の場合の手法を参考にしつつ、やや複雑な手順をとることにより不変式を構成することができた。更に下部幾何構造との関連で、定曲率計量から誘導される共形平坦構造の場合に生じる特別な形の因子を具体的に求めることができ、初年度の研究として満足ゆく成果が得られたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、リー群上の不変で平坦な共形構造の場合について、存在・非存在性を判定するための必要条件を得ることに成功したが、次年度以降はこの研究を続行し、具体的な例に適用可能な必要「十分」条件を得るところまで研究をすすめたい。平坦な共形構造に付随する不変式についても、今回得られた不変式よりも次数の低い不変式を標準的に構成できる可能性が残されていると考えている。幾何構造が複雑になるにつれ、この種の研究は困難度が増すのであるが、他の幾何構造も視野に入れつつ引き続き研究を行う予定でいる。 またこれらとは別の方向からのアプローチとして、リー群上の左不変な擬リーマン計量の定めるリッチ曲率の満たす恒等式の研究も行う予定でいる。この恒等式はリッチテンソルとリー環の構造定数を変数とする不変式の形で得られるはずであり、これが見出されれば平坦な擬リーマン計量が存在するためのobstructionとして有用となるはずのものである。部分的には3次元の場合の成果が得られているので、この問題についても順調に研究がすすめられるものと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究をすすめるにあたって、研究分担者・連携研究者の協力はもとより、関連分野の研究者との意見交換は必要不可欠なものである。そのために、内外で開催される研究集会への参加、また例年広島大学で開催されている幾何学研究集会への講演者の招待等のために旅費を使用する予定でいる。更に多方面にわたる関連分野の文献にもすべて目を通しておく必要があり、そのための図書購入費として設備備品費を使用する予定でいる。
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