2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540090
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
阿賀岡 芳夫 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50192894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田丸 博士 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50306982)
澁谷 一博 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00569832)
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Keywords | 不変式 / 不変量 / 分解公式 / 初等幾何学 / plethysm / ラングルの問題 / 擬似相似 |
Research Abstract |
研究2年目である今年度は、不変式に関する研究として、plethysm の分解公式、及び不変量の初等幾何学への応用について調べた。 plethysm とはテンソル空間のある種の合成積のことであるが、特別な場合を除いてその分解公式は未だ知られていない。曲率を含む一般のテンソル積空間における不変式の状況を把握するためには、この分解公式を(ある限られた場合でもよいから)知ることが不可欠な1ステップである。この問題に関して、今年度はn次元線形空間上の3次形式の場合について調べ、この空間の分解状況がある多面体内の格子点と対応していることを示した。これにより、plethysm を既約分解したときの既約成分の個数がnの多項式で表されることが分かり、またこの分解式に相互律を適用することにより、一般のm次形式が3次の不変式をもつ場合をすべて確定することができた。これらの結果を更に一般次元の一般次形式に拡張することが今後の課題である。 また、不変式(不変量)の一つの応用として、初等幾何学で有名なラングルの問題(四角形の一般化された外心に関する問題)が四角形の不変量を用いて非常に明快な形で解決されることを示した。一般に四角形は相似不変量を7個もち、そのうち関数的に独立なものは4個ある。これらの生成元を辺及び対角線の長さの有理式で具体的に書き下し、それらを用いてラングル変換は involutive であることを示した。証明の過程において、上記生成元が関数的に独立でないために、その都度不変式間の恒等式を見出しながら目標とする等式を示すという作業が必要であった。これと全く同じ現象が曲率型テンソル空間においても起こっており、今後の研究を進めてゆく上で重要な手法・知見が得られたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中核には、不変式・不変量が平坦な等質幾何構造を支配しているという視点がある。その実態を明らかにするためには、不変式全般にわたり、(1)不変式環の構造を決定すること、(2)その生成元を具体的に求めること、(3)不変式と幾何学のつながりを明確にすること、のすべてが明らかにならねばならない。 今年度の研究により、(1)に関しては、あるテンソル空間の plethysm の分解公式を決定し、(2)に関しては、有限群の場合ではあるが不変式の生成元を求める手順を得ることができた。また(3)に関しては、微分幾何学の場ではなく、初等幾何学の世界の中の成果ではあるが、いわゆる初等幾何学的手法では明らかにできなかった事柄を不変量を用いて記述することに成功した(四角形のラングル変換による像は、もとの四角形と擬似相似であること等)。 もとよりこれらの成果は未だ特別なケースについての結果に留まってはいるが、最終的な目標に向かって着実に前進していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究は、初年度の研究を展開するという形ではなく、不変式と幾何学の関連について、裾野を広げる方向での研究となった。 来年度については、初年度の研究の続き(等質空間上に不変で平坦な幾何構造が存在するための必要かつ十分な条件を求めること、そのために必要な不変幾何構造の曲率が満たすべき恒等式を見出すこと等)、及び今年度の研究の続き(plethysm の分解公式をより一般の場合に決定すること、不変量を通じて幾何学的現象を記述すること)を行う予定でいる。 不変量の間の関係式を見つける問題に関して、研究集会における研究者同士の意見交換が今年度は非常に有用であった。来年度以降も積極的に研究集会に参加し、研究課題に関して活発な意見交換を行いたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究をすすめるにあたって、研究分担者の協力はもとより、関連分野の研究者との意見交換は必要不可欠なものである。そのために、内外で開催されている研究集会への参加、また例年広島大学で開催されている幾何学研究集会への講演者の招待等のために旅費を使用する予定でいる。更に多方面にわたる関連分野の文献にもすべて目を通しておく必要があり、そのための図書購入費として設備備品費を使用する予定でいる。
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