2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540090
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
阿賀岡 芳夫 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50192894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田丸 博士 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50306982)
澁谷 一博 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00569832)
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Keywords | リーマン多様体 / 等長埋め込み / ガウス方程式 / テンソル積空間 / 可積分条件 / plethysm |
Research Abstract |
今年度は、リーマン多様体の等長埋め込み問題に現れる可積分条件について、表現論的側面から研究を行った。等長埋め込み問題を考察する際、最初の障害(=可積分条件)として現れるガウス方程式が解をもつための必要条件について表現論的視点から考察し、今までにない新たな必要条件を求めることに部分的に成功した。 テンソル積空間を一般線形群の作用のもとで既約分解すると様々な表現空間が得られるが、それらは自然数のある分割と1対1に対応している。リーマン多様体が与えられたとき、その曲率を用いてある分割に対応する二つの表現空間の間の写像が自然に定義される。もしこのリーマン多様体がある特定の余次元に局所等長埋め込み可能であれば、この写像は自然に定まる自明でない核をもつことを示すことができた。数多く存在する表現空間の中で、どの空間を用いればこのような性質をもつ写像が構成できるのかが最大の問題点であったのだが、plethysm の計算結果等表現論的諸事実を有効に活用することにより、突破口を見出すことができた。これにより、曲率の定める線形写像の階数を計算することにより、ガウス方程式がある余次元では解を持たないことを示すことが原理上可能となった。 現時点では、このような写像は余次元が3以下でしか存在が確認されていないが、更に表現論的な考察を深めることにより、より高い余次元の場合に拡張されるものと期待される。 また、こうして得られた新たな条件を具体的なリーマン多様体(例えば複素射影空間等のリーマン対称空間)に適用することにより、現在得られている埋め込み可能な次元の評価が改良される可能性がある。ここしばらく膠着状態にあったリーマン多様体の局所等長埋め込み問題において、新たな展開が期待される地点に至ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幾何学の研究において表現論的立場から研究をすすめることが有効であることがしばしば観察される。今回得られた進展も、まさにその一例となるものであり、直接的には応用がなさそうな表現論固有の問題に過去数年にわたって取り組んできた研究の積み重ねが、このような幾何学的研究成果への道筋を与えてくれたものと考えている。 今年度はその一つの応用として、等長埋め込み問題にのみ専念して研究をすすめたが、それぞれの幾何構造に現れる可積分条件の障害を具体的に求める際においても、今回得られた表現論的視点・手法は有効に働くものと思われる。 研究に専念できる環境が整えば、今回得られた方向性を更に展開することにより、新たな知見が数多く得られることが期待できると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
リーマン多様体の等長埋め込み問題については引き続き研究を進めてゆきたい。特に高い余次元の場合の条件を今回得られたのと同様の手法で求めること、及びリーマン対称空間等への具体的な応用(計算)についても研究をすすめてゆきたい。 また、類似の方法は他の可積分条件問題にも適用可能であると思われる。多様体上あるいはリー群上に平坦な幾何構造が存在するための必要条件を求める問題についても、(これは若干問題設定が異なるため、別方向からの考察が追加的に必要であると思われるが)研究をすすめてゆく予定である。 研究集会等を通じて、来年度も引き続き問題意識を共有する研究者達との交流を深め、意見交換により得られる知見を積極的に自分の研究に生かしたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
おおよそ計画通りに予算を使用したのだが、昨年度は若干研究に必要な図書類の購入が少なめであったために、今年度への繰り越し金が生ずる結果となった。 最終年度である今年度においても、昨年度までと同様に各種研究集会への参加・発表を活発に行い、また研究に必要な備品類も計画的に購入予定である。
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