Research Abstract |
最終年度の前までの研究実績の概要は以下の通りである. 1. 最近 Franks-Handel, Korkmaz氏等により証明された, 写像類群の低い次数の複素線型表現を完全に決定する結果を, 「線型性の視覚化」と比較検討し, 特に, 曲面群の複素線型表現の変形空間における写像類群の作用の大域的不動点の存在について, 新しい制限を得た. また, 未解明な内, 最も低い次元である, 種数gの写像類群の2g+1次元表現の分類に向けて写像類群のいわゆるEarl類と関連する新しい制限を得た. 2.「線型性の視覚化」それ自体を改良し, 特に境界付きコンパクト有向曲面の場合に中心を除いた線型性を完全に判定できる形にした.また, これを基点付き写像類群の場合の議論と1つに統合し, また前項の結果も含める形で, 改めて1つの論文にまとめた. 最終年度にあっても, それぞれの項目を継続して検討し発展させた. その結果, 特に上記1.でのべた, 2g+1表現の分類は曲面の境界成分とmarked pointsの個数が合わせて1以下の場合に完成した(現在論文を準備中.) また, 単純閉曲線が生成する写像類群の加群として「曲線加群」を定式化し, その基本的性質を検討した. その結果, これまでに知られている唯一の具体例である, Luoの表現について, 20年以上未解決のまま残っているある問題に対する一つのアプローチの方法を得た. なお, 上記項目2. で述べた論文は, 最終年度になって出版された. 以上の遂行のため, 研究期間全体にわたって, 購入した計算処理ソフトにより複雑な計算実験を効率的に行った. また, 関連する図書, 論文, を適宜購入し関連すると思われる幾何学分野の検討を行った. 更に, 国内外で行われた研究集会に適宜参加し, 他の研究者と知見の交換を図った.
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