2012 Fiscal Year Research-status Report
曲面の特異平坦計量によるタイヒミュラー空間と位相的力学系
Project/Area Number |
23540103
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
高山 晴子 城西大学, 理学部, 准教授 (90274430)
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Keywords | タイヒミュラー空間 / 錐状特異点 / 平坦計量 / 擬エルミート計量 |
Research Abstract |
タイヒミュラー空間は、リーマン面の複素構造のモジュライ空間の普遍被覆空間であり、代数幾何や関数論、複素力学系、低次元トポロジー、数理物理など幅広い分野に現れる重要な空間である。特に3次元双曲幾何と不糞力学系および関数論がタイヒミュラー空間を舞台として互いに交叉して得られた結果は多く、近年ではタイヒミュラー空間上の位相力学系の研究が発展している。一方、曲面の特異平坦構造のモジュライ空間上の力学系は近年目覚ましく発展しており、有理多角形のビリアードと平行曲面、曲面の同相写像類群とクライン群および曲線複体の組合せ構造の幾何などおおくの豊かなつながりが生まれている。 本研究課題では、タイヒミュラー空間の幾何構造について、リーマン面の複素構造から定義されるタイヒミュラー距離、曲面の双曲構造を用いて定義されるWeil-Peterson距離およびThurston距離などさまざまな距離に対し、曲面上の錐状特異点付き平坦計量を用いてえられる幾何構造について研究を行っている。これは面積形式から得られるが、前年度に得た超楕円曲線のタイヒミュラー空間の面積形式の符号は、実際(m,m)タイプのエルミート形式から誘導されるエルミート計量、すなわち(m-1, m)タイプの擬エルミート計量であることを証明した。これは実際、超楕円曲線のモジュライ空間を各超楕円曲線の分岐点をリーマン球上に射影して得られる点の配置空間とみなしたとき、各点にある特別な錐角を与えた場合の平坦計量の面積形式の符号を調べることによって得られる。本年度は、この錐角を(Gauss-Bonnet条件をみたすように)任意に与えたときの面積形式のエルミート計量としての符号を求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タイヒミュラー空間の幾何構造について、リーマン面の中でも重要な超楕円曲線がなすモジュライ空間上の幾何構造を得ることは基本的であり、計画の第一にあった。超楕円曲線の錐状特異点付き平坦構造を、超楕円対合で割って得られる複素射影直線上の錐状特異点付き平坦構造に還元した場合、錐状特異点における錐角は、実際Gauus-Bonnet条件をみたせば任意に与えられる。本年度は前年度に得られた場合をより一般化したことにより、超楕円曲線の錐状特異点付き平坦構造のモジュライ空間およびタイヒミュラー空間に入る幾何構造の変形について議論の基盤の構築ができ、目標とする位相力学系の問題に近づいた。
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Strategy for Future Research Activity |
超楕円曲線のタイヒミュラー空間上に得られた擬エルミート計量の変形について研究し、特に既知の計量との比較を行う。また、超楕円曲線以外のリーマン 面に関して、正則2次微分を用いた組み合わせ構造に基づき、同様の平面多角形のモジュライ空間によるパラメタ付けについて考察する。これらのことを、連携研究者およびタイヒミュラー空間の専門家達との密な連絡を取り合い、主要な研究集会に出席することで、常に最新の情報を得ながら行う。また、書籍は必要と予算に応じて揃えるようにする。論文執筆に必要なコンピュータ環境を整えて図などのピクチャーソフトも適宜揃える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初研究集会(2,3月、ウィーン)に出席して、タイヒミュラー空間の専門家達との議論および情報交換を予定してい たが、諸事情により出席できなくなったため旅費に余剰が生じた。次年度は、連携研究者達との研究連絡および他の研究集会出席のた めの旅費として用いる計画である。
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Research Products
(5 results)