2011 Fiscal Year Research-status Report
3次元多様体の同境圏におけるホモロジー同境不変量の構造
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23540113
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
福本 善洋 立命館大学, 理工学部, 准教授 (90341073)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 3次元多様体 / 同境圏 / ホモロジー同境 / bounding genus / Seiberg-Witten理論 / V-多様体 / 指数定理 / 非結合的代数 |
Research Abstract |
本研究では,ホモロジー同境を3次元多様体の同境圏から,次数付き可換環の圏への関手のファイバーとして捉え,V多様体上のゲージ理論を応用することにより,ホモロジー同境不変量であるbounding genusを圏論的に精密化し,その構造を解明する手法を確立することを目標とする.2010年度では,松本幸夫氏によって導入されたホモロジー同境不変量であるbounding genusを,3次元多様体の同境圏におけるある種の距離として一般化を行った.2011年度は,その精密化に取り組み,3次元多様体のホモロジー同境類全体のなすホモロジー同境モノイドの構造を,上記の関手を用いて調べる手法を,主に以下の側面において研究を行った.1.ホモロジー同境モノイドは,3次元多様体の同境圏における射をホモロジー同境に制限した部分圏であり,ホモロジー同境圏の連結成分とみなすことができる.特に,ホモロジー同境圏を,コホモロジー環の同型類の関手によるファイバーとして捉え,その連結和に関する振る舞いなど,コホモロジー環やその間の準同型によって調べる方法を考察し,ホモロジー同境モノイドにおける線形独立性といった基本的な概念の整備を行った.2.一般化されたBounding genusは,2つの3次元多様体と,そのコホモロジー環の間の代数的射,および,コホモロジー環に関する境界条件に対して整数値をとる不変量であり,弱い劣加法性を持つ意味において,ある種の距離にあたる概念であるといえる.一方の3次元多様体とホモロジー同境であるもう一つの3次元多様体に対し,そのホモロジー同境によって誘導される代数的射,および境界条件に関して,2つのbounding genusが等しいことを証明した.このホモロジー同境不変性が,ホモロジー同境圏の構造を調べる一つの手法を与えるものと期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は,ホモロジー同境を3次元多様体の同境圏から,次数付き可換環の圏への関手のファイバーとして捉え,V多様体上のゲージ理論を応用することにより,ホモロジー同境不変量であるbounding genusを圏論的に精密化し,その構造を解明する手法を確立することにあるが,現在は,圏論的な精密化の段階にあり,おおむね順調に進展しているといえる.一方で,与えられた次数付き可換環の間の射を実現する同境の構成をはじめとし,古田・亀谷不等式において1次元コホモロジーの4重積の構造が本質的に寄与する具体例の構成等,解決するべき課題は少なくない.
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は,3次元多様体の同境圏から次数付き環のなす圏への関手の枠組みに関する前年度の結果を踏まえ,主にシリンダー状の端を持つ4次元多様体のSeiberg-Wittenモノポール,およびインスタントン・モジュライ空間の可約解,コンパクト性,バブルについて調べ,特につぎの観点から研究を行う.1) 閉じた4次元多様体およびV多様体におけるコホモロジー環の構造,2) 境界を持つ4次元多様体とそのコホモロジー環の構造,3) ホモロジー同境でない二つのホモロジー球面に同じSeifert多様体を連結和したときのホモロジー同境,4) 一般化されたBounding genusとmu-不変量との関係,5) 4次元多様体のgeography(与えられた基本群を持つ4次元多様体の可能性),6) インスタントンのバブルと基本群との関係
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度の研究費の使用計画は,主に1) 東京大学大学院数理科学研究科,およびその他の研究機関における研究打ち合わせ,研究発表による国内出張で約50万円,また,2) インディアナ大学,南カリフォルニア大学における研究発表,およびフランス高等科学研究所における研究会,国際会議による海外出張で約70万円,また,3) 書籍,および科学技術ソフトウェアを約10万円,4) パソコンおよびその周辺機器に約15万円, 5) 印刷その他に約5万円を使用する計画である.
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Research Products
(1 results)