2012 Fiscal Year Research-status Report
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23540114
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
森本 徹 同志社大学, 研究開発推進機構, 研究員 (80025460)
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Keywords | nilpotent analysis / nilpotent geometry / 巾零解析 / 巾零幾何 / 微分方程式の幾何 / 外在的幾何 / リー環の表現と幾何 |
Research Abstract |
これまでの研究によって次の理論を得ている:階数付きリー代数g の階数付きベクトル空間Vへの表現(g,V)に対して,一方では積分可能な線形偏微分方程式系の族ID(g,V) が,他方では,Vに付随して決まる旗多様体Flag(V) の部分多様体の族SM(g,V)が定まり,両者の間には圏同型対応がある.さらに,(g,V) が単純既約の時には,ID(g,V) (またはSM(g,V))の元の不変量を決定するアルゴリズムが構成され,不変量の在処は(g,V)から一定の方法で定義されるコホモロジー群H1+である. 今年度はこの理論を具体的な場合に適応し詳しく調べた.特に,興味深い例として(g,V)が(1) sl(3) とその随伴表現, (2) sp(4) とその随伴表現 (so(2,3) とその随伴表現),の場合に鍵となるコホモロジー群H1+を表現論の方法(ウェイト図形,Kostantの理論など)を用いて決定した.そしてその幾何学的意味を探った. 岩波書店からの出版が計画されている本「倉西正武の数学」への寄稿原稿として「微分方程式の流れと幾何の光」を9月に書き上げた.この執筆の過程で微分方程式の歴史を幾何学の目から振り返り整理した.そして特に,微分方程式系に対する倉西の延長定理を巾零解析の枠組みにおいてフィルター付き多様体上の微分方程式系の延長定理へと拡張した. フイルター付き多様体上の微分方程式系についての我々の一連の研究,特に最近のKlein Cartan programme について,東京,大阪,ポツダムでの国際的なセミナーや研究集会で講演,議論し,理論の広がりを図った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
共著論文の脱稿が予定より遅れている.原稿は一応出来上がっているが,まだ整理推敲の仕事が残っており,また関連して調べたり考えたりしたい問題がいろいろあり,関心はともすると論文の完成のための仕事よりもそちらの問題の方に向かいがちになる.また原稿「微分方程式の流れと幾何の光」の執筆ために夏から秋にかけての数ヶ月をこの仕事で忙殺された.このため共著論文の完成が少し遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
出来るだけはやく共著論文を完成させ,モノグラフの執筆に集中したい. 一方,次の研究活動も進めねばならないと考えている. 1.第2次世界大戦後,世界の数学は大きく変動発展した.近年,高齢の数学者がだんだん世を去り,1950年代の数学の証人が少なくなってきた.この時代から重要な寄与をしてきた J.L.Koszul, B.Malgrange は幸いまだ非常に元気なので,彼らから1950年代の幾何と解析について聞き,その歴史を再考し,これからの研究の糧にしたい. 2.この6月Bergen でSummer School"Analysis and Geometry"が開催され,その講師に招かれている.この機会に,巾零幾何・巾零解析のサブリーマン幾何への応用としてこれまでから温めてきた問題について,さらに考察を進め,ヨーロッパの若手研究者と共同研究を進めたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年の夏は原稿執筆のため忙しく招待されていたSchroedinger Institute での国際研究集会もキャンセルせざるを得なかった.それで外国旅費に予定していた研究費が残った. 次年度は前年度に残った研究費を国際共同研究や研究交流のために計画的かつ有効に使いたい.
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