2012 Fiscal Year Research-status Report
空間形内のキルヒホッフ弾性棒を中心とした1次元弾性体の研究
Project/Area Number |
23540116
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
川久保 哲 福岡大学, 理学部, 助教 (80360303)
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Keywords | キルヒホッフ弾性棒 / 弾性曲線 / 変分問題 / 渦糸 / 局所誘導階層 |
Research Abstract |
平成24年度は,完備Riemann多様体内のKirchhoff弾性棒の方程式の初期値問題について考察した.そして,任意の初期値に対して,大域解(実数全体で定義された解)が一意的に存在することを証明した.特にこの結果から,長さ有限のKirchhoff弾性棒は,Kirchhoff弾性棒であることを保ったまま,両側に,長さ無限大に一意的延長ができるということが分かる. なお,Kirchhoff弾性棒の方程式は,曲げと捩れの効果を考慮したエネルギーのEuler-Lagrange方程式であり,非線形4階の常微分方程式である.従って,初期値問題の局所解の存在はほぼ自明であると言って良いが,大域解の存在は決して自明なことではないことを注意しておく.(実際,曲線の変分問題の解であっても,大域解に延長できない場合もあることが知られている.) 上の結果は,特別なケース,即ち空間形内の場合には,既に平成23年度に証明が完成していた.平成24年度は,これを一般の完備Riemann多様体内に拡張することができた. 証明についてであるが,まず空間形内の時は,Kirchhoff弾性棒から決まるある量が第一積分となり,これを使って大域解の存在を示していた.一方,一般の完備Riemann多様体内の場合,同じ量は一般に第一積分とはならないので,空間形の時の方法をそのまま使うことはできない.しかしながら,この量を利用することによって,解の先験的評価が可能であることが分かり,それによって大域解の存在が証明できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,Riemann多様体内において,測地線よりも豊かな構造をもつ曲線(特にKirchhoff弾性棒やソリトン曲線)の幾何学を展開することである. 平成24年度は,完備Riemann多様体内において,Kirchhoff弾性棒の方程式の初期値問題の大域解の一意存在を証明することができた. 境界値問題については,これまでにも様々な結果が得られているが,初期値問題の大域解の存在について正面から扱った結果はなかった.この問題について,昨年度の部分的結果を拡張し,完全な肯定的解決が得られた. 今年度の第一の目標は達成できたため,研究はおおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,まずはやり残している次の2つの研究を行う予定である. 第一に,高次元空間形内のKirchhoff弾性棒の具体例の構成について研究を行う.これまでの研究で,5次元空間形内の螺旋でない充満Kirchhoff弾性棒の例が構成できている.これを一般の奇数次元の空間形,及び4次元空間形内に,何らかの形で拡張することを目標とする. 次に,3次元空間形内のKirchhoff弾性棒を,可積分系(局所誘導階層)の理論によって拡張した曲線である,ソリトン曲線について研究を行う.これまでの研究で,3次元空間形内の全ての第nソリトン曲線の座標表示を,その曲率と捩率によって表すことができている.従って,もし曲率と捩率を具体的に表すことができれば,ソリトン曲線自体を完全に具体的に記述できたことになる.nが3以下ならば,それができることが分かっているが,一般の場合はまだ示されていない.一般の場合,微分方程式の階数が高くなるため,曲率と捩率を求めることは非常に困難になると思われるが,何らかの条件の下で具体的な表示式を求めることを目標とする. この二つの他に,3次元Euclid空間内の不安定な閉Kirchhoff弾性棒の構成に関する研究も行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(4 results)