2012 Fiscal Year Research-status Report
インスタントンの変形量子化とそれに伴う位相不変量の非可換変形
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23540117
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Research Institution | Kushiro National College of Technology |
Principal Investigator |
佐古 彰史 釧路工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (00424200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 吉昭 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (40101076)
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Keywords | 国際研究者交流 / ベルギー / イギリス |
Research Abstract |
本応募研究の延長線上にある長期的な目標には、非可換変形された多様体(非可換多様体)のゲージ理論を用いた微分位相幾何学の確立がある。そのために非可換多様体上のインスタントンの構成とその微分位相幾何学的性質の解明を、変形量子化あるいは幾何学的量子化の方法を用いて実行することが目的である。最初に現在研究途上にあるR4上のインスタントンの非可換変形とそれに付随する位相不変量の非可換変形の性質を解明し、その後CP2などの他の非可換多様体上についてそれらの解明を目指すことが目標である。平成24年度の研究実績: 前年までの研究でユークリッド空間におけるインスタントンの変形量子化の様子はある程度解明された。次なる段階として、CP2などの曲がった多様体の上でのゲージ理論の変形量子化に研究を進めたいわけであるが、具体的に計算可能な多様体の例が少ないという現状がある。そのため、新しく計算可能な変形量子化された多様体を構成すべく複素射影空間と複素双曲空間の変形量子化をカラベゴフによる変数分離の方法を用いて構成した。結果はガウスの超幾何関数を用いて交換関係を書き下すことができる。これに関しては研究協力者である梅津裕志准教授(釧路高専)と鈴木俊哉准教授(釧路高専)との共同研究であり、論文が掲載された(J. Math. Phys. 53, 073502 (2012))。また、国際会議(Sixth International Workshop DICE2012)においても発表されている。また前年度までの研究内容であるR4上のU(N)(N≧2)ゲージ理論におけるインスタントンの非可換変形の理論についての総合報告もContem. Math. 584 (2012)に掲載された。またそれらを含む著書「幾何学の量子化」(サイエンス社 SGCライブラリ95 2012年)も前田氏と共著で刊行された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インスタントンの変形量子化に関する理解を深めることを主な目的とした本研究である。変形量子化前の空間でよくわかっているインスタントンは多くは4次元ユークリッド空間R4上のインスタントンである。R4のインスタントンの変形量子化に関係する部分については概ね重要な性質に関して調べつくし、論文として出版されたので一応の決着がついている。ゲージ群がU(1)の場合についての考察が不十分であることは認めるが、それ以上に緊急性が高いものを優先している。優先度が高い次の段階に進む方向としてコンパクトな多様体上のインスタントンの量子変形が考えられるがそれをいきなりインスタントンで考察するのは飛躍がある。特に現在の目標にして進めているのは、複素射影空間上のインスタントンの変形量子化であるが、変形前のインスタントンについても研究が不十分な点が多い。したがって、変形量子化する前の段階も含めて複素射影空間でのゲージ理論やインスタントン解の研究を進め、さらにその変形量子化を構成しようという段階である。現在までに、計算可能な変形量子化を構成することに成功したので、次はその上でのゲージ理論の定式化を目指しつつ、インスタントン解について理解を深めていくことになる。当初想定していた以上に多くの問題があることが、次第に明らかになってきており、目標完全なる達成にはなお多くの時間が必要であるが、そのことはとりもなおさず、より大きな分野へと成長してることを意味する。そのような意味で、研究は概ね順調にすすんでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
4次元ユークリッド空間におけるインスタントンの変形量子化の理論に関しては理解がある程度進み、次の段階としてコンパクトな多様体におけるインスタントンの変形量子化を考える段階に入っている。ただ、インスタントンについて研究を進める前の段階で、そもそも具体的な字変形量子化の計算ができる多様体の構成でなおかつ、変形前のインスタントンについての理解がある程度得られているものが必要であった。その模型として、複素射影空間のカラベゴフの方法による変形量子化を完全に書き下す段階まで来ている。したがって今後はこの変形量子化された複素射影空間の上にゲージ理論を定式化することと、そもそも変形前の複素射影空間上のインスタントンに対して理解を深める研究を行っていく必要がある。共同研究者の慶應大学の前田吉昭教授との共同研究を通して、複素射影空間上のゲージ理論の変形量子化を行っていくことが最初の方策となる。それと同時に変形量子化前の複素射影空間におけるインスタントンの理解の研究、特にアティヤ‐ヒッチン‐シンガー流のツイスター理論からのインスタントンの構成法をさらに進化させる研究は釧路高専の梅津裕志准教授と鈴木俊哉准教授と共同研究で推進する予定である。今年度から釧路高専から東京理科大に私の所属が変わったため、前田教授との研究打ち合わせは頻繁に行える環境になったが、逆に梅津、鈴木両准教授との研究討議をするためには、私が何度も釧路を訪問する必要があると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
変形量子化前の複素射影空間におけるインスタントンの理解の研究、特にアティヤ‐ヒッチン‐シンガー流のツイスター理論からのインスタントンの構成法をさらに進化させる研究は釧路高専の梅津裕志准教授と鈴木俊哉准教授と共同研究で推進する予定であるため、2人を東京に招聘する、あるいは私が釧路高専に出張する機会を多く設ける必要がある。また、高専の性格上、あまり講義が開講されている期間ではまとまった研究時間を設けることが難しいので、夏季休業中などに長期滞在を行うなどの工夫が必要である。そのため、年に2,3回の短期的な研究打ち合わせと、長期休業中に数週間程度の滞在を1回ないし2回程度行う予定である。また、ベルギーのリエージュ大学のレコムテ教授やイギリスのエジンバラ大学のスザボー教授等と研究に関して意見交換を行う機会が以前にあったが、今後もそういったことが必要になるとともに、研究成果についても国際会議の場で発信していく必要がある。現在のところ具体的な日程や出席する会議などは未定であるが、研究の進捗状況と教育などのデューティーや研究討議する先方の都合、その他の予定などを勘案して最低でも1回ないし2回程度の海外渡航を計画している。また、所属の移動に伴って従来使っていたラップトップのコンピューターが無くなったため、このままではこうした出張業務やプレゼンテーションの機会に支障をきたすことが考えられる。そのためノートパソコンの購入を計画している。また、書籍や論文等の購入についても例年通り行う予定である。
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Research Products
(4 results)