2011 Fiscal Year Research-status Report
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23540124
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小松 彦三郎 東京大学, 大学院数理科学研究科, 名誉教授 (40011473)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 関孝和 / 大成算経 / 田中由真 / 算学紛解 / 終結式 / フーリエ / へヴィサイド / 数学としての数学史 |
Research Abstract |
『大成算経』全20巻約九百丁の校訂本を出版することが第一の目標であったが、残念ながらこれは果たせなかった。この本は関孝和の『解伏題之法』(1683) によって連立代数方程式の補助変数消去の一般理論ができあがり、これを最終の手段として当時の全数学の代数化を企て、実行した結果を詳細に記述したものである。弟子の建部賢明、賢弘の協力を得28年かけて書かれたという。未だに出版されたことはない。これは真に驚嘆すべき著作であって、これまであまり研究されずに来たのは人間業ではついてゆけなかったためであろう。研究代表者は1998年東京理科大学理学研究科に理数教育専攻が新設されたとき研究課題の一つとして取り上げ、2006年に退くまでに7人の学生が修士論文の一部として10巻分の校訂本を作ってくれた。その後は科学研究費補助金などの援助を得て、今では全巻の校訂本が直ちに印刷機に掛けられるInDesignファイルとしてできている。それが出版社を見つけられないでいるのは我が国ジャーナリズムおよびそれを支える専門家達の関乃至は研究代表者に対する極めて低い評価に原因がある。三上義夫は1914年D.E. Smith との共著で「関は良い教師で旧来の方法を改良したことは認められるが、偉大な数学者、画期的な理論の発見者というこれっぽっちの証拠もない。」と断言し、生涯その意見を変えなかった。関たちの研究をよりよく理解するには、関西にいてこれに対抗した数学者達の研究も欠かせない。特に、田中由真の「算学紛解」全8巻が重要である。今回ここでの行列式を使わない終結式の計算に数学的証明を与えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「大成算経」には約20の異本が知られているが良本といえるものは多くない。現在はそのうちの4つばかりを選んで異同を調べて校合をしているだけである。一度出版されれば困難になる。その他の本との校合は今がチャンスで時間が無駄になることは決してない。 フーリエとケルヴィン卿の地球の熱歴史の研究の歴史もかなり調べたのであるが、昨年は東日本震災の影響で発表の機会を失ってしまった。これも発表できる段階までもってゆきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
『大成算経』の校訂本の出版については、森本光生氏の尽力で京都大学数理解析研究所の共同研究の記録として同研究所の講究録のシリーズの中で出版できる見通しがついたので、その準備に力をそそぐ。そして、世間が関たち江戸時代の数学に対するわれわれの研究を認めてくれるようになれば、始めの予定通り研究の対象をフーリエやへヴィサイドに移してゆきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
『熱の解析的理論』の翻訳の出版、フーリエの『熱の解析的理論』の翻訳に解説を添えて出版する。翻訳そのものは東京理科大学大学院理学系研究科理数教育専攻の学生であった西村重人君の修士論文(2001)として全巻完成している。
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