2012 Fiscal Year Research-status Report
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23540124
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小松 彦三郎 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 名誉教授 (40011473)
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Keywords | 関孝和 / フーリエ / ヘヴィサイド / 数学としての数学史 |
Research Abstract |
関孝和の最大の貢献は連立代数方程式の一般解法を初めて確立したことであり、ヨーロッパで同様の研究が発表された時より80年前のことである。しかし、わが国では同時代に競争者がいて田中由真は関とちかう行列式を使う方法と一見行列式とは無関係な別の方法の二つを発表している。 今回関と田中の行列式は定義は違うものの同じであること、及び田中のもう一つの方法も19世紀英のシルヴェスターの結果に帰着できることを示した。 以上に関連して、関はよい先生であったかもしれないが偉大な数学者であったというほんのこれっぽちの証拠もないという主張を持ち続けた三上義夫の言明に根拠がないことを示した。 -大成算経巻之-の割り算「見一算」の計算例と「古今算法記」及び「塵劫記」の同様な計算例を比較し、専門書とされる前二者の方がより教育的な配慮がされていることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「この研究で第一の目標としたのは、関孝和、建部賢弘、賢明兄弟の三人が天和三年(1683)より28年をかけて書いたとされる20巻本「大成算経」の校合本を出版することであったが、これまでの成果は、目録および最初の4巻の本文の印刷原稿をまとめたのに止まる。これは森本光生氏の校閲を経て、全文の音義に代えて関孝和編「解伏題之法」の書き下し文をそえて京都大学数理解析研究所講究録の一冊として出版される予定である。これでも実現すれば「大成算経」の最初の出版となる。 東アジアでの数学書は、士大夫をめざす人々のためのものと民衆のためのものに判然と分れ、従って政権の移動と共に前者の伝が絶えることなどが起こっていたが、この本あるいは江戸時代の他の数学書を見れば、わが国では全く事情が異なることが判る。その意味では19世紀以降の欧米の数学論文と似た性格をもつ。しかし、ギリシャ以来の伝統を欠くため、論証に厳密性を欠く所が多い。その欠を補うため、出発点は江戸時代の知識にとどめ、その上に今日の検証に耐える証明を与えるようにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通りとはいえないが、大成算経」校合本の作成と併行して、はじめからの研究目標であったフーリエとヘヴィサイドの業績、特にベッセル関数を用いた展開による偏微分方程式の研究を評価する仕事に着手したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大成算経校合本の印刷原稿の作成、その他研究論文の作成並びにそれらを発表するための費用にあてる。
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