2012 Fiscal Year Research-status Report
関孝和から建部兄弟へ伝授された数学とその発展の研究
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23540126
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
真島 秀行 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 教授 (50111456)
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Keywords | 関孝和 / 建部賢弘 / 行列式 / 円周率 / 解伏題之法 / 算学玄訓 / 大成算経 / 鉄術算経 |
Research Abstract |
1.関新助孝和の「解伏題之法(天和三年重訂)」と「大成算経第17巻伏題」の他に「算学玄訓」に現代数学的には終結式・行列式のことが書いてあることに注目して研究が進展した.「算学玄訓」も少なくとも3種類あるがそのうちの一つの京都大学理学部数学教室所蔵の「算学玄訓」に書かれた特別な形の(対称)行列に関する内容が初稿であろう,との説を得た.というのは,2本の方程式から終結式を導くには対称行列の行列式さえ定義しておけばよいからであり,最初にそれを確立したと考えられるのである.そこから更に行列式の一般論として,冗長であるが自然な数学的な発想である「式の係数に関する展開式」を得ていたが,まとめ方を工夫して「解伏題之法(重訂)」の2次,3次,4次行列の「逐式交乗」による計算の表と,この表からうまく組み合わせることによって「交式斜乗」による計算の図表に表したが,5次以上の行列について「交式斜乗」は誤っているので,「大成算経」では元の自然な考えに戻したと推察されることを指摘した. 2.建部賢弘が円周率計算に使った「累遍増約術」がどのような発想から生まれたか考察した.関孝和の『括要算法』の第四巻にある円周率の近似値計算に対して,「綴術算経」(内閣文庫本)で「始関氏増約の術を以て定周を求る事を理會して一遍にして止む故に十三万千七十二角に到る截周を求て十五六位の真數を究め得たり今累遍増約の術を用る事を探り會して千二十四角に到る截周冪を求て四十餘位の真數を究む是亦首より増約累遍を用る事を察すへからす一遍の増約を用て後玄く探て累遍する事を會せり」述べ,「建部先生綴術真本」(東大本)及び「綴術算経(東北大学 狩野本)」では「二十許位の真数を究め」と書いている.さらに建部賢弘の著と考えられる「弧背截約集」の上巻には円周率の計算表が掲載されている.これらを考え合わせて「累遍増約術」の発想の源を探った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関孝和の行列式の発想について、初校と考えられる稿本を特定できた。 国際数学者会議(ICM)が2014年に開催されるが、その年は建部賢弘の生誕350年の記念の年に相当する。それに合わせてICMサテライトコンファレンスとして国際研究集会を開催し、また、全国和算研究大会を東京で開催し、この課題に関する成果を発表する予定である。4年間の研究の2年目としては次のことができたので概ね順調に進展していると判断する。 1.昨年「解伏題之法」の行列式と「大成算経」の行列式の記述の違いに関してはこれまでにない新しい見解をまとめることができ、行列式に関しては関孝和の理論をほぼそのまま建部は受け入れ後世に伝えたことになる、という見解を発表出来たが、今年度は新たにいくつかの「算学玄訓」に「解伏題之法」の内容が書かれており、その中の一つが初校と推察できるという見解まで至れたから。 2.昨年、建部賢弘の「綴術算経」及びその類書の関孝和への言及の比較対照表を作成でき、それの記述の違いに注目しながら、別の文献「弧背截約集」の上巻の円周率の近似値の計算表を参照して、関孝和の「増約法」から発展させた建部の「累遍増約術」の発想の切っ掛けと考えられる数値計算が何であったのか推察できるようになったから。。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き次のことを行う。 1.建部賢弘の「綴術算経」(国立公文書館所蔵)及びその類書(「不休綴術」(東京大学総合図書館所蔵)、「綴術算経」(狩野本)(東北大学附属図書館所蔵))の関孝和への言及の比較対照表に基づき、細部の比較を行うことより円周率の計算、零約術、算脱、玉率(球の表面積と体積との関係式の定数)の計算、弧の計算についても関孝和から建部賢弘へ伝えられた数学の内容を明らかにしていく。 2.建部賢弘の改暦、国絵図製作への貢献について、資料を収集し検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.国立公文書館、東京大学総合図書館、東北大学附属図書館、日本学士院等所蔵の関孝和、建部賢弘に関する資料収集を行う。 2.日本数学会年会・秋季総合分科会、日本科学史学会年会、京都大学数理解析研究所で開催される「数学史の研究」集会、全国和算研究大会、日本数学史学会研究会等で研究発表を行う。同時に和算研究者らとの研究情報交換を行う。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Seki Takakazu, his life and bibliography2013
Author(s)
MAJIMA, Hideyuki
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Journal Title
“Seki, Founder of Modern Mathematics in Japan” A Commemoration on Tercentenary, Ser. Springer Proceedings in Mathematics & Statistics, Vol. 39, Knonloch E., Komatsu H., Liu D.(Eds)
Volume: 39
Pages: 3-20
Peer Reviewed
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