2011 Fiscal Year Research-status Report
量子確率論的手法によるシーガル・バーグマン変換と無限分解可能分布の研究
Project/Area Number |
23540131
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
浅井 暢宏 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (60399029)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 量子確率論 / q変形直交多項式 / ヤコビ・セゲーパラメータ / ブレンケ型母関数 / q変形超幾何級数 |
Research Abstract |
現在までに,非ガウス型測度に付随するシーガル・バーグマン変換,測度,空間の構成に取組んできたが,連続双対ハーン多項式に付随するバーグマン測度の構成を論じた論文がIDAQPから出版された.しかし,その測度の無限分解可能性や確率変数の量子分解の具体表示はまだ分らない.同時に,上記に関連して問題意識を共有している久保泉氏(連携研究者)らと共に乗法的繰り込み法の視点から,ブレンケ型母関数に付随する直交多項式の構成および分類問題に取組んだ.先行研究としてチハラによる68年の論文があるが,彼の連鎖数列法による直交多項式の分類に至る説明は概略のみで,証明にも不備が有る.我々は,これらのギャップを乗法的繰り込み法の視点から再検討することによりチハラの分類を完全なものにすることを目指した.構成と分類自体はファヴァードの定理を出発点とした.その結果,q変形パラメータを含むヤコビ・セゲのパラメータ,および付随する乗法繰込み因子などのq変形超幾何級数表示をもれなく得ることが出来た.さらに,チハラが指摘していなかった例を含んでいることも判明した.これらの結果は論文にまとめ現在投稿中である.なお,今年度得られた結果は,速報的に,MRCC(ベドレボ,ポーランド)での国際会議,アメリカ数学会年会(ボストン)および日本数学会年会で発表報告する機会を得た.さらに,23年12月に研究集会「直交多項式・特殊関数が関わる確率論的諸問題とその周辺」を名古屋で主催した.量子確率論に直接関わる研究者のみならず,無限粒子系や無限分解可能分布論等の専門家にも講演を依頼し情報交換を行った.アンシェレビッチは最近の論文で,単調確率論の文脈において,ある特殊なブレンケ型母関数が登場することを指摘している.単調独立性に起源を有する確率分布を理解するために,我々のアプローチと結果が基本的な役割を果たすのではないかと期待している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題は,相互作用フォック空間,非可換確率変数(過程)族および非ガウス統計の相互関係を解明することが最終的な目標となる.その際,非ガウス型シーガル・バーグマン変換の積分核や,付随する相互作用フォック空間上で作用する一般的な生成・消滅作用素のアクションを具体的に計算する必要がある.本研究課題初年度において,まずは,浅井・久保・郭の乗法的繰り込み法による直交多項式理論がブレンケ族の直交多項式の構成にも有効であることが判明したことは大きな進展である.
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Strategy for Future Research Activity |
国会審議の影響による平成23年度科研費採択通知遅延により,第32回量子確率論とその関連領域についての国際会議(トレント,イタリア)の参加登録の機会を逃したことにより,出席することが出来なかった.当該年度使用額が当初の使用予定額に比して若干減となっているのはこのことが主たる理由である.平成23年度におけるブレンケ型母関数についての成果に鑑み,今後は一般化シーガル・バーグマン変換,および乗法的繰り込み法とスタイン原理を融合させることにより,確率分布を具体的に計算する手法の開発を目指す.このために,連携研究者と綿密な研究打合せを行う.また,他の量子確率論をはじめとする関連分野研究者との研究打合せの機会を持つ.特に量子ウォークやそれに関連するスペクトル解析は本研究課題と密接に関わると予想されるので,研究情報収集や交換を積極的に行う.海外における研究活動として、本研究課題に関係する国際会議が,韓国,ポーランド,フランスにて平成24年度中に開催されるため,それらに出席し講演する予定である.その際,関連分野研究者との情報交換を行い,関連分野における研究進捗状況にも目を注視しながら本研究の細かな方向性について議論したいと考えている.一方,国内では,東北大学情報科学研究科や京都大学数理解析研究所などで開催される古典・量子確率論や数理物理学関連の研究集会に出席することで関連分野研究者との研究情報交換や議論することより本研究をより深化させる予定である.なお,本研究課題は分野横断的な幅広い知識とテクニックが必要とされるため,確率論,量子確率論,無限次元解析学,量子物理学,数理物理学,量子情報理論などの文献を幅広く取り揃える.また,他研究者との電子メールによる情報交換や,インターネットを介した研究情報収集が必要不可欠であることから,パソコン等の情報機器を購入する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は次の事柄に研究費の使用を計画している.内訳は大きく分けて,旅費と物品費に分けることが出来る.1.連携研究者をはじめとする国内他大学,研究所所属の無限次元解析学や量子確率論研究者らとの研究打合せに伴う出張旅費に支出予定.2.海外旅費:第7回無限次元解析と量子確率論についての国際ワークショップ(清州,韓国),および第33回量子確率論とその関連領域についての国際会議(マルセイユ)への出席に伴う海外出張旅費と滞在費等に支出予定.3.国内旅費:東北大学情報科学研究科や京都大学数理解析研究所などをはじめとする国内大学,研究機関で開催される古典・量子確率論や数理物理学関連の研究集会・ワークショップへの出席・講演,研究情報収集等に伴う出張旅費として使用予定.4.物品費:確率論,量子確率論,無限次元解析学,量子物理学,数理物理学,量子情報理論に関する文献の購入,および,パソコン等の情報機器の購入に使用予定.
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