2012 Fiscal Year Research-status Report
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23540133
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
関根 順 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (50314399)
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Keywords | リスク鋭感的ポートフォリオ最適化 / 長期間双曲的成長率 / Wishart型ファクターモデル / 非完備市場 / 効用最大化 / 効用無差別価格 |
Research Abstract |
1) 静岡大学畑宏明氏との共同研究の中で、正定値対称行列値のWishart型確率ファクター過程を持つマーケットモデルに対してリスク鋭感的ポートフォリオ最適化問題を解析した。有限期間・無限期間問題に対してそれぞれ明示的な解表現を得た。確率的な相関構造を持つようなマーケットモデルの重要性は近年増しており、そのような構造を持つモデルに対して動的ポートフォリオ最適化問題が明示解を持つ状況はまれであり、モデルの豊かさと結果の明示性に対して価値が認められる。現在、解の明示性を維持したままで確率制御問題として問題がどこまで一般化できるかを考察中である。 2) 京都大学宮田英明氏との共同研究の中で、ドリフト項が直接観測できない確率変数で与えられている部分情報下での冪型効用最大化問題の考察を行った。最適効用の長時間成長が指数的ではなく双曲的であるという結果と、更にその双曲型成長率は確率変数の分布に寄らない値である(正確には分布密度関数の原点での値のみに依る)という結果を得た。このことより、最小化されたダウンサイド確率の長時間減衰率も非指数的であることが示唆される。 これは行動経済学などで提唱された「双曲型割引率」をアプリオリにではなく、自然な帰結として数学的に導いた一例であり、興味深い。 3) 非完備市場で一般の効用関数を用いて終末富最大化問題を取扱い、最適解を特徴付ける前進・後退確率微分方程式系を近似的に解いてゆく手法を、(i) 完備市場設定、(ii) 指数効用関数を用いた設定、にそれぞれ漸近していくような状況下で考察した。(i), (ii)以外の設定で効用最大化問題は十分に調べられているとは言えず、この点において結果の価値が認められる。また、効用無差別価格の漸近解析などの応用も考えられ興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・Wishart型ファクターモデルに関しては当初の予想通りの結果が得られた。 ・大偏差制御に関するHJB方程式の解析を介さない別解法については、現在も引き続き一般化や応用を考察中である。 ・双曲型成長率に関する結果は、特殊かもしれないが予想外の結果であり興味深い。 ・微小ノイズ型大偏差制御に関する貝瀬秀裕氏との共同研究が下地となり、非線形確率下での大偏差制御の研究が始まりつつある状況である。 ・非完備市場下で一般的効用関数を用いた効用最大化問題の解析は、今後漸近挙動の解析に応用できると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)長時間大偏差制御に関して得ている別解法を発展させる。特にExact Asymptoticsの計算についてや、中偏差(moderate deviation)の制御について考察する。 2)不確実性を考慮した非線形確率下でのG-ブラウン運動に関する大偏差の結果を、漸近的最適な重点サンプリング法の開発に応用する。(東北大学大須賀恵美氏、大阪大学加藤恭氏との共同研究) 3)低流動性資産の期待成長率最大化に関する結果を拡張する。(大阪大学加藤恭氏、森谷雅史氏との共同研究) 4)鞍点近似を用いた裾確率評価公式(Luggannani-Rice公式)の一般化と誤差評価を行う。(大阪大学加藤恭氏、吉川健一氏との共同研究)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・5月にLuiss大学(Rome, Italy)のFausto Gozzi教授を訪問し、状態変数に関する制約を設けた効用最大化問題や、低流動性資産に関する効用最大化問題について議論・共同研究を行う予定にしている。 ・10月に那覇で開催される国際ワークショップに招待講演予定である。 ・7月にHong-Kongで開催される59th World Statistics Congressにて招待講演予定である。
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