2011 Fiscal Year Research-status Report
ウェーブレットによる空間スケール解析を用いた画像分離
Project/Area Number |
23540135
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
守本 晃 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (50239688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芦野 隆一 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (80249490)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ウェーブレット解析 / 画像分離 / 瞬時混合モデル / 連続マルチウェーブレット変換 / 位置スケール情報 / 円環分割マルチウェーブレット関数 / 自己組織化地図 / ガウスの消去法 |
Research Abstract |
複数の信号源からの信号の重ね合わせを複数観測し,観測信号のみの情報から信号源の個数や元信号を推定することをブラインド信号源分離問題と呼ぶ.時間遅れなしの線形和による瞬時混合モデルと,時間遅れありの時空間混合モデルがある.この問題の2次元版として,画像分離問題を考察する.位置スケール解析であるウェーブレット解析を用いて,画像分離問題を対処することにより2次元のウェーブレット理論を発展させることが研究目的である.本年度は,瞬時混合モデルの画像分離問題を中心に取り扱った.画像に対する連続ウェーブレット変換として,複数のウェーブレット関数を用いる連続マルチウェーブレット変換を提案し,その性質や逆変換公式などを研究した.特定の方向を持ったエッジに敏感なマルチウェーブレット関数として,円環分割マルチウェーブレット関数を提案した.M個の観測画像の円環分割マルチウェーブレット関数による連続ウェーブレット変換のそれぞれの点・スケール・エッジの方向ごとに,実部と虚部をならべた2×Mの位置スケール情報行列を定義する.画像のエッジ(輪郭線)は連続な線分であり,元画像たちのエッジが交わるのは点であるから,観測画像のエッジをうまく抽出できればそれらはほとんどただ一つの元画像のエッジである.このとき,位置スケール情報行列は階数が1になる.そこで,情報行列の階数が1になるかどうかを,特異値分解を用いて調べる.特異値分解した時の後半の直交行列の第1列がある元画像に対する混合割合の推定になる.階数が1になるときの直交行列の第1列のクラスタリングを行い,クラスターの数で元画像の数を推定し,クラスターの代表点で混合割合を推定する.クラスター密度は元画像と混合割合により大差があるので,高いクラスターに対する元画像を,ガウスの消去法を用いて消去し,新しい観測画像の組を構成するマルチステージの分離方法を考案した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の研究期間内に明らかにしたいことは次の3点であり,研究1年目としては,おおむね順調に進展している.i) 画像の平行移動無しの重ね合わせを分離する問題に適したウェーブレット変換の構成およびその理論的な意味づけと短時間フーリエ変換との違いについては,連続マルチウェーブレット変換を提案しその性質を述べた.連続ウェーブレット変換とそのリース変換,正方マルチウェーブレット関数,短時間フーリエ変換,カーブレット変換,バンドレット変換などと比べて,円環分割マルチウェーブレット関数を用いた連続マルチウェーブレット変換が画像分離問題に対して優れていることが分かった.ガウスの消去法を用いたマルチステージ分離法を提案し,画像分離能力が向上した.マルチステージ分離法と解析ウェーブレット変換を組み合わせた音声分離問題にも取り組んでいる.ii) 複数の画像が平行移動をともなって重ね合わせられている場合の画像分離問題の解法および,その数学的背景の考察については,平行移動量を連続マルチウェーブレット変換の相関および位相情報の利用やモルフォロジのエッジ抽出による相関を用いて決定する方法を現在考察中である.iii) i)・ii) に対して,商の位相情報に対応する概念の構築とそれを用いた分離アルゴリズムのロバスト化および高速化の研究について,現状の分離手法はノイズの影響に対して脆弱なので,モルフォロジなどを用いて観測画像の輪郭線部分のみの情報を利用した分離方法などを考えている.ガウスの消去法を用いたマルチステージ分離法は計算量が多いので並列計算を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間内に明らかにしたいは次の3点であり,それぞれについて今後の推進方策を述べる.i) 画像の平行移動無しの重ね合わせを分離する問題については,24年度に,マルチステージ分離法に関した研究成果を ICWAPR2012(International Conference on Wavelet Analysis and Pattern Recognition),可視化情報学会,日本応用数理学会,数理科学セミナーなどで発表し,Full paper をInternational Journal of Wavelets, Multiresolution and Information Processing に投稿する予定である.音声分離問題に対して,マルチステージ分離法と解析ウェーブレット変換を組み合わせた分離法についても研究発表を行う.ii) 複数の画像が平行移動をともなって重ね合わせられている場合の画像分離問題に関しては次の研究計画がある.観測画像からモルフォロジのダイレーションからエロージョンを引いたエッジ画像や連続ウェーブレット変換によるエッジ画像間の相関を用いて平行移動量を決定する方法を検討している.さらに,元画像を平行移動したときの連続マルチウェーブレット変換の位相情報の変化を検討する.おそらく,スケールと平行移動量に比例した位相ずれが現れるはずである.これらのことを利用した分離アルゴリズムを24年度中に開発する.iii) i)・ii) に対して,商の位相情報に対応する概念の構築とそれを用いた分離アルゴリズムのロバスト化および高速化の研究については,24年度中に各マルチウェーブレット関数による連続ウェーブレット変換の計算など並列処理が可能な部分は並列処理する.25年度には.より効率的なアルゴリズムの開発と手法のロバスト化について検討を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額約13万円については,24年度年初に必要な雑誌 Information の購入費用とsoftware の更新費用に充てる予定である.研究発表と情報収集のため ICWAPR2012 (中国西安),可視化情報学会シンポジウム(東京),日本応用数理学会年会(稚内),数理科学セミナー(台湾大学),日本数学会秋季総合分科会(九州大学),RIMS共同研究「ウェーブレット解析とサンプリング理論」等に参加する出張費用・参加費用に使う予定である.また,昨年に引き続き「平成24年度 文部科学省 数学・数理科学と諸科学・産業との連携研究ワークショップ:ウェーブレット理論と工学への応用」(現在申し込み中)をオーガナイズするための印刷代や講演者の旅費などに使う予定である.さらに,日本応用数理学会ウェーブレット研究部会セミナーをオーガナイズする際の講師謝金や旅費や印刷代などに使う予定である.物品費としては,数値実験を行うために,並列計算ができる PC およびソフトウェアを購入する予定である.
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Research Products
(20 results)