2012 Fiscal Year Research-status Report
ウェーブレットによる空間スケール解析を用いた画像分離
Project/Area Number |
23540135
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
守本 晃 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (50239688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芦野 隆一 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (80249490)
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Keywords | ウェーブレット解析 / 画像分離 / ブラインド信号源分離 / 連続マルチウェーブレット変換 / 円環分割マルチウェーブレット関数 / 自己組織化地図 / ガウスの消去法 / N 分木離散ウェーブレット変換 |
Research Abstract |
複数の信号源からの信号の重ね合わせを複数のセンサーで観測し,観測信号のみの情報から信号源の個数や混合モデルのパラメータや元信号を推定することをブラインド信号源分離問題と呼ぶ.時間遅れなしの線形和による瞬時混合モデルと,時間遅れありの時空間混合モデルがある.本研究課題では,この問題の2次元版として画像分離問題に焦点を当てる.そして,位置スケール解析であるウェーブレット解析を用いて画像分離問題を対処することにより,2次元のウェーブレット理論を発展させることが研究目的である. 24年度は,様々な2次元の連続ウェーブレット変換を提案し比較した.その中で,一番性能の良かったのが円環分割マルチウェーブレット関数を用いる連続マルチウェーブレット変換であった.25年度は,瞬時混合モデルの画像分離問題に対して,観測画像にこの連続マルチウェーブレット変換を作用させることで得られる位置スケール情報行列を特異値分解し自己組織化地図とガウスの消去法を用いた画像分離方法を提案した.この方法を用いると,元画像4枚くらいの混合からの分離が精一杯であった従来法と比較して,元画像10枚程度の混合問題まで解けるようになった. これらの研究成果を可視化情報学会,応用数理学会,ICWAPR 2012 等で発表し,論文(雑誌 Int. J. Wavelets Multiresolut. Inf. Process. に2014年に掲載される)にまとめた. N 分木離散ウェーブレット変換というシフト不変性を持つ離散ウェーブレット変換を提案し,画像の電子透かしに応用した.この変換を画像分離問題にも使ってみたい.さらに,時間遅れありの時空間混合モデルに基づいた画像分離方法として,円環分割マルチウェーブレット関数による連続マルチウェーブレット変換の複素相関関数を用いる方法の開発に取り組んでいる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の研究期間内に明らかにしたいことは次の3点であり,研究2年目としては,おおむね順調に進展している. 1) 画像の平行移動無しの重ね合わせを分離する問題に適したウェーブレット変換の構成およびその理論的な意味づけと短時間フーリエ変換との違いについて調べること.この点に関しては,円環分割マルチウェーブレット関数を用いた連続マルチウェーブレット変換が最適であった.従来の位置スケール情報行列の特異値分解と自己組織化地図を用いる方法に加えて,ガウスの消去法を用いたマルチステージ分離法を提案し,画像分離能力が向上した.マルチステージ分離法と解析ウェーブレット変換を組み合わせた音声分離問題も行った.以上のことから,1)の目的は達成している. 2) 複数の画像が平行移動をともなって重ね合わせられている場合の画像分離問題の解法および,その数学的背景の考察について調べること.この点に関しては,各観測画像に対する円環分割マルチウェーブレット関数を用いた連続マルチウェーブレット変換を求め,それらの複素数値相関を取ることにより平行移動量を求める方法を開発中である.結果をまとめて,2013 年夏に学会発表を行う. 3) 分離アルゴリズムのロバスト化および高速化の研究について,高速でシフト不変性を持つ N 分木離散ウェーブレット変換を提案し,画像の電子透かしに応用した.この変換を画像の平行移動無しの重ね合わせを分離する問題に対して応用する予定である.また観測画像にノイズが入る場合の研究も行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間内に明らかにしたいことは次の3点であり,それぞれに対して今後の推進方策を述べる. 1) 画像の平行移動無しの重ね合わせを分離する問題については,マルチステージ分離法に関した研究成果を5月に東京で開催される国際会議 Information 2013 で発表するとともに情報収集を行う.Full paper がInt. J. Wavelets Multiresolut. Inf. Process. に2014 年に掲載されることが決定した. 2) 複数の画像が平行移動をともなって重ね合わせられている場合の画像分離問題に関しては,各観測画像に対する円環分割マルチウェーブレット関数を用いた連続マルチウェーブレット変換の複素数値相関から平行移動量を推定する方法を,8月にポーランドのクラコフで開催される ISAAC 2013 と9月の福岡で行われる応用数理学会年会で発表する予定である.現状では,複素相関の計算時間がかなりかかるのでプログラムのマルチスレッド化を行う予定である.平行移動量が推定できた後の混合係数などのパラメータ推定法を開発する.来年3月の応用数理学会研究部会連合発表会で平行移動の入った場合の分離方法の全体を発表したい. 3) 分離アルゴリズムのロバスト化および高速化の研究について,N 分木離散ウェーブレット変換を用いた画像の電子透かしについて,7月に天津で行われる ICWAPR 2013 で発表し,情報交換を行う予定である.N 分木離散ウェーブレット変換を用いたブラインド信号源・画像分離を研究する予定である.観測画像にノイズの入った場合の画像分離問題の研究も引き続き行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は,3月の応用数理学会研究部会連合発表会で共同研究を行っている学生の旅費に充てる予定だったけれど,残金が少なかったので学生旅費は運営経費から捻出したので次年度使用額約3万円が残った. 本年度は,5月に東京で開催される国際会議 Information 2013,7月に中国の天津で行われる ICWAPR 2013,8月にポーランドのクラコフで開催される ISAAC 2013,9月の福岡で行われる応用数理学会年会などに参加・成果発表を行うための費用に使う予定である. 「平成25年度 文部科学省 数学・数理科学と諸科学・産業との連携研究ワークショップ:ウェーブレット理論と工学への応用」(現在申し込み中)をオーガナイズするための印刷代や講演者の旅費や学生のアルバイト代などに使う.さらに,日本応用数理学会ウェーブレット研究部会セミナーなどをオーガナイズする際の講師謝金や旅費や印刷代などに使う予定である. 雑誌 Information の購入費用と数値計算ソフトmatlab などのsoftware の更新費用に充てる予定である.高速計算のために,PC を新調することも考えている.
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Research Products
(18 results)