2012 Fiscal Year Research-status Report
相分離曲線のスケーリング極限と臨界指数の確率論的研究
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23540136
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
樋口 保成 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60112075)
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Keywords | イジングモデル / パーコレーション / 相分離線 / スケーリング極限 |
Research Abstract |
高温域(臨界温度より上)におけるイジングモデルにおいて、外部磁場をパラメータとして動かしたときのパーコレーション問題は自明でないことがすでに分かっているが、このパーコレーション転移点(これを臨界磁場と呼ぶ)においてはプラススピンの連結成分(スピンクラスター)でサイズ無限大のものは存在しないことも既知である。しかし、原点から無限にスピンクラスターが伸びるという強制的な条件を付けた時、この条件付き確率がある確率測度に収束するとき、この極限の確率測度を Incipient Infinite Cluster (IIC) 測度と呼ぶが、上記のイジングモデルで高温域では IIC 測度が存在することを示すことができた。このことは独立な場合には Kesten の結果として有名である。証明の手法も彼の方法を使うが、独立性がないところをイジングモデルの持つ特殊な混合性によって解決することができた。 この結果により、この IIC 測度のもとで無限スピンクラスターが存在するが、そのうえでランダムウォークを考えて劣拡散性が成り立つかという問題を考えることができるようになった。この問題は今後の問題としてさらに研究を続けたい。 残念ながら、最大の目標であるスケーリング極限に関しては、 one arm 確率と呼ばれる量が極限を持つことを示そうと試みたが、うまくいかなかった。三角格子上の独立なパーコレーションのもつ高い対称性を使わない解析方法を探すことは今後も引き続き研究を続けたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最大の目標はイジングモデルの高温域でのパーコレーションにおいて相分離線の分布のスケーリング極限を臨界磁場において調べ、独立な場合のパーコレーションにおけるスケーリング極限であるSLE6と同じである何らかの証拠を見つけることであるが、この問題については、最初の予想以上に難しいことがわかってきた。今年度の one arm 確率の収束問題ですらも容易には証明できない状態である。そういう意味では全く遅れているといっても正しいのだが、当初からこの問題の難しさは予想もしていたので、並行して、スケーリング関係式やIIC測度の存在などの問題を考えることも計画に入れていたが、こちらの方は順調に解決できてきている。 以上を総合して、やや遅れていると判定する。
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Strategy for Future Research Activity |
イジング相分離線のスケーリング極限についてさらに詳しく独立な場合の解析を検証しながら、対称性を減らした時の議論の展開の仕方を探る。昨年度できなかった国内外の研究集会に積極的に参加し、情報の収集に努めるとともに、連携研究者である竹居正登氏(横浜国大) と頻繁に研究打ち合わせをしながら、時機を見てZhang 教授(米国コロラド大学)の招へいまたはこちらからの訪問による研究打ち合わせを行う。また、昨年同様、SLE理論の研究者を神戸に招へいし、議論を行う。 イジングモデルの臨界点近傍のスケーリング関係式についてはほとんどの関係式が独立な場合と同様に成立することを確かめることにこれまで成功してきているが、まだ残っている関係式もいくつかあり、上記の主要研究と並行してこの問題を解決することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
イジングモデルの相分離線のスケーリング極限に関しては、研究が困難を極めており、今年度、来年度とも研究の突破口を開くべく多くの研究集会への参加を予定する。このための旅費が必要である。また、国外の研究集会については参加できないものの方が多く、シンポジウム報告集や最新の研究成果を発表している図書などの購入を積極的に行う。また、スケーリング関係式についての新しい成果については、学会や研究集会に参加しで発表する予定。 この部分の研究については、来年度は取りまとめの段階に年度当初からいることができると思う。
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