2014 Fiscal Year Annual Research Report
相分離曲線のスケーリング極限と臨界指数の確率論的研究
Project/Area Number |
23540136
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
樋口 保成 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60112075)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 2次元 Ising model / パーコレーション / 相分離曲線 / スケーリング極限 / 臨界指数 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度までは高温域における2次元の Ising model のパーコレーションの問題を考えてきた。主な結果は、臨界指数と呼ばれる量の間の関係式が独立な場合の percolation の時と同じように成立すること、その際、独立な場合の議論で重要な役割を果たす Russo の公式を Ising model の場合に似た形で拡張することができることなどを示した。さらに、臨界磁場において、無限サイズの+スピンの連結成分は存在しないが、有限な箱の中で原点と境界をつなぐ+スピン連結成分があるという条件を付けた分布が箱を無限に広げたときに極限を持つことを示すことができた。これらの結果は Ising model においても独立な場合と同様に相分離線の極限分布がSLEと呼ばれる曲線族の上にあることを予想させるものとなっている。しかしながら、平成26年度に見方を変えて低温域における同種の問題を考えてみたとき、独立な場合とは大きく異なる結果が出てきた。上述したように、 独立なパーコレーション臨界点では無限連結成分は現れない。しかし、グラフを長距離のつながりを許すように変えたモデルでは臨界点で無限連結成分が現れる。一方 Ising model においては、低温域では臨界磁場(低温域ではこの値は 0)を境にこの確率が 0 から正にジャンプする。そこで、臨界磁場周辺での臨界指数について調べてみたが、原点を含む+スピン連結成分のサイズの期待値は臨界点にいくら近づいても有界にとどまり、独立な場合とは大きく異なる挙動をすることが分かった。臨界磁場において発散するのは混合性の混合係数と呼ばれる、相転移に直接関係した量のみであり、その発散は少なくとも磁場の逆数くらいの発散であることがわかった。 残念ながら相分離線の極限分布を求めることはできていない。
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