2011 Fiscal Year Research-status Report
Koebe(1916)による正準スリット領域への数値等角写像
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23540140
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
天野 要 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (80113512)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 等角写像 / 代用電荷法 / 基本解 / 数値複素解析 |
Research Abstract |
研究の主目的は,代用電荷法を用いて,(1) Koebe (1916)の正準スリット領域の最初の13種への表現が簡潔で精度の高い近似写像関数を統合的な形式で構成し,(2)その成果を等角写像のための数学ソフトウェアとしてWebで公開することである.本年度の主な研究実績は次のとおりである. 1.近年の研究を非有界な多重連結領域から(a)平行,(b)円弧,(c)放射スリット領域への統一的な数値等角写像の方法として再構成した.統一的とは問題が係数行列を同じくする連立1次方程式に帰着されることを意味する.その結果,これらの等角写像の近似写像関数の統一的な構成がf(∞)=∞のみならずf(v)=∞,|v|<∞という異なる条件下でも可能になった. 2.非有界な多重連結領域から個々の直線スリットが実軸となす角を個別に指定した一般的な直線スリット領域への近似写像関数の構成法に関する進行中の研究を完成し,論文として投稿した(出版予定である).この直線スリット領域は NehariやKoebe の平行スリット領域や直交直線スリット領域の自然な一般化になっている. 3.スリットを伴う矩形領域から円環領域への近似写像関数を構成し,画像処理に応用した.ここではJoukowski変換を前処理に用いてRiemann面上に電荷を配置するという手法が用いられている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.平行,円弧,放射スリット領域は基本的に重要な正準スリット領域であり,これらの領域への等角写像は理工学への応用も広い.また,個々の直線スリットが実軸となす角を個別に指定した一般的な直線スリット領域は平行スリット領域を含む様々な直線スリット領域の自然な一般化になっている.このような正準スリット領域への等角写像の表現が簡潔で精度の高い近似写像関数を統合的に構成できることの意義は大きい. 2.Joukowski変換を前処理に用いてRiemann面上に電荷を配置するという手法は上記の等角写像の逆写像関数の構成に重要であると期待されている.その有効性を改めて確認することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に基づいて引き続き次のような課題に取り組みたい. 1.有界な多重連結領域から円弧放射スリット円板領域,円弧放射スリット円環領域への近似写像関数,及び非有界な多重連結領域から螺旋スリット領域への近似写像関数の構成法を定式化し,その有効性を数値実験で検証すること. 2.代用電荷法をKoebeのアルゴリズムに適用した正準円領域への数値等角写像の実現の可能性を検討すること. 3.得られた研究成果を順次ScilabのTOOLBOXとして実装すること. 4.数値等角写像で重要な計算技術である連続スキームの構成法等について再考し,これまでの研究成果を著書の形にまとめること.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度末,非有界な多重連結領域から個々の直線スリットが実軸となす角を個別に指定した一般的な直線スリット領域への近似写像関数の構成法に関する論文の採録が決定し,Springer社からフリーアクセスライセンスと別刷を購入する必要が生じた.次年度予算と合わせて支払いに充てたい.研究計画そのものに大きな変更はない.
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