2012 Fiscal Year Research-status Report
Koebe(1916)による正準スリット領域への数値等角写像
Project/Area Number |
23540140
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
天野 要 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (80113512)
|
Keywords | 等角写像 / 代用電荷法 / 基本解 / 数値複素解析 |
Research Abstract |
研究の主目的は,代用電荷法を用いて,(1) Koebe (1916)の正準スリット領域の最初の13種への表現が簡潔で精度の高い近似写像関数を統合的な形式で構成し,(2)その成果を等角写像のための数学ソフトウェアとして公開することである.本年度の主な研究実績は次のとおりである. 1.非有界な多重連結領域から個々のスリットの斜角(実軸となす角)を個別に指定した直線スリット領域への近似写像関数の構成法に関する論文をJapan Journal of Industrial and Applied Mathematicsに掲載することができた. 2.非有界な多重連結領域から個々のスリットの斜角(放射半直線となす角)を個別に指定した螺旋スリット領域(円弧,放射スリットを含む)への近似写像関数の構成法を提案し,その有効性を数値実験で検証し,数回の学会発表等を行った.この方法は原理的には有界領域の問題にも適用可能である. 3.代用電荷法による数値等角写像に現れる複素対数関数の数値計算に伴う技術的な問題を検討,整理した. 4.境界上の3点の対応を正規化条件とするRiemann写像の近似写像関数の構成法を提案した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究で,代用電荷法を用いて,Koebe (1916)の正準スリット領域の最初の13種への表現が簡潔で精度の高い近似写像関数の構成法を与えるという研究の主目的は原理的には達成することができた.斜角を任意に指定できることはKoebeの正準スリット領域のさらなる一般化になっている.また,重要であるにも関わらず,複素対数関数の数値計算に関する整理された記述はあまり見当たらない.
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であり,研究の完成と発表を第1の目標としたい. 1.今年度の研究実績1~3の内容を整理し,論文投稿を行いたい. 2.上記の内容は原理的には有界領域の問題にも適用可能である.しかし,その場合の近似写像関数の構成に伴う問題を具体的に検討することは依然として重要である.この問題に取り組みたい. 3.研究成果を順次ScilabのTOOLBOXとして実装すること,研究成果を著書の形にまとめることについても可能な限り進展させたい.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に論文の採録が決定し,Springer社からフリーアクセスライセンスと別刷を購入するために前倒し支払請求を行った.しかし,経費が見込みより少なく済み,今年度は若干の次年度使用額(B-A)が生じた. 今年度予算は研究発表のための旅費が中心であるが,投稿予定の論文掲載料もこの科学研究費で支払いできるように努力したい.
|