2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540142
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川崎 英文 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (90161306)
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Keywords | 最適化理論 / ゲーム理論 / 離散不動点定理 / 純戦略ナッシュ均衡 / n人非協力ゲーム |
Research Abstract |
ゲーム理論と最適化理論の分野で,不動点定理と凸解析を軸に連続構造と離散構造の研究をおこなっている. ゲーム理論では,ブラウワーの不動点定理を利用する離散不動点定理に関する研究が大きく進展した.このタイプの離散不動点定理のアイディアは以下の通りである,まず最初に,格子点で定義された写像を格子の単体分割を基に区分的線形写像に拡張する.次に,得られた連続写像にブラウワーの不動点定理を適用し,整数点とは限らない不動点を得る.最後に,付加的な条件を与えて,その不動点の近傍の整数格子点のひとつが本来の写像の不動点になることを示す.飯村は付加的な条件として方向保存条件を提案した.研究代表者は,双行列ゲーム(2人非協力ゲーム)の最適応答写像について,方向保存条件の特徴づけに成功した.その結果は,任意の単体分割に対して適用可能である.さらに,n人非協力ゲームへの拡張をおこなった.そこでは,一般化フロイデンタール分割を定義し,最適応答写像に対する方向保存条件の特徴づけを与えた.また,双行列ゲームを通して,単調写像に対する離散不動点定理と上述の不動点定理との比較をおこなった. その他,縮小写像の離散不動点定理を用いて,完全情報をもつ展開形ゲームが純戦略ナッシュ均衡をもつというキューンの定理を説明したが,その研究成果が国際誌に掲載されることが決まった.さらに,単調写像の離散不動点定理とそのゲーム理論への応用に関する竹下氏との共著論文が日本オペレーションズ・リサーチ学会の欧文誌に掲載された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブラウワーの不動点定理を利用する離散不動点定理に関する研究が大きく進展し,単調写像に対する離散不動点定理との比較が可能になった.その結果,3種類の離散不動点定理の全体像が把握できるようになり,「純戦略ナッシュ均衡の存在定理の背景には何らかの離散不動点定理が存在する.」という研究代表者の予想が裏付けられつつある. また,研究成果の公開については,最適化とゲーム理論に関する専門書の原稿を整理整頓した上で加筆し,総ページ数が200ページを越えた.この原稿は,セミナー資料として利用するなどして内容の充実を図っており,順調に進んでいる. 以上のことから,研究はおおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
ゲーム理論については2つの課題がある.ブラウワーの不動点定理を利用するタイプの離散不動点定理は,2人非協力ゲームについては任意の単体分割に対応できるが,n人非協力ゲームについては一般化フロイデンタール分割にとどまっている.これを任意の単体分割も取り扱えるようにしたい. また,縮小写像に対する離散不動点定理の着想の元になったリチャードによる局所的な縮小写像の離散不動点定理があり,後者の方が強力な結果である.そこで前者と同様に,後者を用いて純戦略ナッシュ均衡の存在を説明できる何らかのゲームのクラスがあるものと予想され,その解明に取り組みたい. 最適化理論については,組合せ最適化における伝承の定理の証明を非有界集合の場合に完成させたい.その際,「有理凸多面体は,その整数点の凸包に一致する.」という凸多面体の整数性に関する基本命題が深くかかわるものと考えている.また,ロヴァツの研究によりひろく知られている,劣モジュラ関数のもつ凸性と凹性という二面性の問題にも取り組みたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
数理科学の基礎研究という研究の性質上,他機関研究者の招聘と他研究機関に出向いての研究討論,成果発表のための国内外への出張旅費が研究費に占める割合が大きい. 研究打ち合わせは,7月に京都大学で開催される組合せ最適化のセミナーに参加し,劣モジュラ解析と離散凸解析に関して議論したい.京都大学数理解析研究所ではこれ以外にも最適化,ゲーム理論,非線形解析の研究集会が開催されるため,それらに参加する予定である.離散不動点定理については,海外の研究者とメイル等で議論を深めたい.6月にハンガリーで離散数学の国際シンポジウムが予定されている.そこで研究成果を発表するとともに,海外の研究者と直接討論をおこなう予定である. その他,最適化理論とゲーム理論,およびその関連分野の新刊書が不可欠である.また,資料整理,計算補助の学生アルバイトに対する謝金が必要である.
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Research Products
(7 results)