2013 Fiscal Year Research-status Report
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23540142
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川崎 英文 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (90161306)
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Keywords | 離散不動点定理 / 離散凸解析 / ゲーム理論 / 最適化理論 / Spernerの補題 / Brouwerの不動点定理 / Hexの定理 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き,ゲーム理論と最適化理論の分野において不動点定理と凸解析を軸に連続構造と離散構造の研究をおこなった.ゲーム理論については,次の2つの結果を得た.(1) 標準単体の等分割の頂点集合からそれ自身への写像が方向保存条件を満たすとき,どの完全ラベル小単体も,少なくともひとつの頂点が不動点になることを証明した.(2) ブラウワーの不動点定理とヘックスの定理が同値であることと,スペルナーの補題からブラウワーの不動点定理が導かれることはよく知られている.2次元の場合,スペルナーの補題では3種類のラベルを用い,ヘックスの定理では2種類のラベルを用いる.当該年度は,スペルナーの補題から直接ヘックスの定理を証明することに成功した.最適化理論については,M凸関数に関する基本的な命題の正確な証明を与えた. また,縮小写像の離散不動点定理を与え,それを用いて「完全情報をもつ展開形ゲームが純戦略ナッシュ均衡をもつ」というキューンの定理を説明した吉良氏との共著論文が国際誌に掲載された. また,執筆中の専門書のタイトルを「均衡と極値の離散と連続構造」とすることにし,以下の項目を書き加えて原稿が220ページになった.(1) ブラウワーの不動点定理と同値な数々の定理,(2) ボルスク・ウラムの定理・タッカーの補題とその応用,(3) 射影平面と有限射影平面,(4) スペルナーの補題,(5) M凸集合とM凸関数,(6) L凸集合とL凸関数,(7) M凸性とL凸性の共役関係.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学科長等の管理職業務のため講演・発表する機会は少なかったものの,ゲーム理論の研究については,2次元の場合に従来の離散不動点定理より強い結果を得た他,不動点定理の周辺に位置する諸定理の整理整頓が進んだ.最適化理論についても,劣モジュラ解析や離散凸解析の諸定理に厳密な証明を与えた上で,全体像を俯瞰できる状況になった.また,研究成果の公開については,執筆中の専門書を遂行してページ数を一旦160頁まで減らしたのち,多くの章を書き加え,原稿が220頁になった.以上のことから,研究はおおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
ゲーム理論については,ブラウワーの不動点定理より強い結果として知られているボルスク・ウラムの定理とその離散版であるタッカーの補題の応用を研究計画に加える.この観点からの研究結果としてはハムサンドイッチ定理が有名であるが,本研究ではゲーム理論への応用を図りたい. 最適化理論については, 最適化理論については,有界でない整凸集合の基本的な事項の証明を与えたい.さらに,劣モジュラ関数,M凸関数,L凸関数が有する凸性と凹性という二面性の問題に取り組みたい. これらの研究を進めるために,オペレーションズ・リサーチ関係の研究集会に参加する等して,最新の研究の動向を把握する. また,執筆中の専門書の完成を目指したい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に,理学部数学科長および大学院数理学専攻長の管理職を兼任し,6月に予定していた,ハンガリーで開催された「第8回日本・ハンガリー離散数学と応用シンポジウム」での発表を取りやめざるを得なくなったほか,弘前で開催された非線形解析と凸解析の国際シンポジウムへの参加を断念することになったため. 平成26年8月に国際数学者会議が韓国のソウルで開催されるが,それに合わせて各種のサテライトシンポジウムが数多く開催される.そのひとつ,The fourth Asian Conference on Nonlinear Analysis and Optimization (NAO-Asia) が8月に台湾の台北で開催されるほか,20th Conference of the International Federation of Operations Research Societies (IFORS) が7月にスペインのバルセロナで開催される.それらに参加して,昨年度に発表の機会を逃した研究結果やその後の研究成果を発表する予定である.
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Research Products
(2 results)