2011 Fiscal Year Research-status Report
ウェーブレット解析と精度保証付き数値計算技法の融合による画像数学の構築
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23540145
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
皆本 晃弥 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00294900)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 二重ツリー複素数離散ウェーブレット変換 / 区間演算 / 電子透かし / ダイアディック・ウェーブレット / 画像処理 / 音声処理 |
Research Abstract |
本研究の目的は、精度保証付き数値計算で得られたアイディアをウェーブレット解析と融合させて新たな画像処理法を開発し、その技術に対する数学的な理論(画像数学)を構築することである。この目的を達成するため、本年度の計画としては、通常の離散ウェーブレットとダイアディック・ウェーブレット変換に基づいた電子透かし法の検討を予定していた。しかし、研究を進めるにつれ、電子透かし法が幾何変換耐性をもつためには、演算量の増加、ひいては計算時間の増加を招いたとしてもシフト不変性のあるウェーブレットを利用する方がよい、という結論に至り、通常の離散ウェーブレットではなく、2重ツリー複素数ウェーブレットとダイアディック・ウェーブレットの2つを中心に検討することにした。この2つのウェーブレット変換にはもともと冗長性があるが、今回は精度保証付き数値計算で利用される区間演算を用いて、この冗長性をさらに拡張させ、従来のデジタル画像電子透かし法よりも画像圧縮や回転・拡大縮小といった攻撃に対して耐性のある電子透かし法の開発に成功した。この結果は、一見すると、画像処理とは無関係と思われる精度保証付き数値計算法の分野で開発された手法が、画像処理分野へ有効に適用された例として意義がある。また、区間演算とウェーブレット変換の融合によって新たな電子透かし法が開発できたという事実は、これらの融合によって新たな画像処理技術の開発を示唆している、とも考えられ、この点において重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画は、ウェーブレット分解とHVSとの関係を検討し、ダイアディック・ウェーブレット変換と区間演算に基づいた電子透かし法の検討を行うことであった。今年度はこれらの検討に留まらず、新たにダイアディック・ウェーブレット変換と区間演算に基づいた電子透かし法、2重ツリー複素数ウェーブレット変換と区間演算に基づいた電子透かし法、という2つの電子透かし法を提案したため、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、電子透かし法を開発する際、攻撃耐性を向上させるために、演算量(計算時間)を犠牲にするのもやむを得ない、という立場をとっていたが、今後は、計算時間の短縮も図れるようにする。また、得られた成果は、なるべく国際会議や国際論文誌で発表するよう努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を遂行しやすくするために、当初予定していた計算機システムに加え、仮想環境構築ソフトや、研究成果を効率よくまとめるため論文作成支援ソフトや文献管理ソフトなどを購入した。そのため、物品費が当初の予定よりも増えたため、旅費を抑えることで対応した。また、次年度はアメリカで開催される国際会議で発表する予定であるため、旅費を少しでも多く利用できるよう次年度使用額を残した。次年度は、この次年度使用額と請求した金額を合わせたものを、国際会議や国際会議論文誌で研究成果を発表するための旅費、論文掲載料、採択率を上げるための英文論文校正費などに主に利用する予定である。また、国内の学会・研究集会などにも参加し、引き続き必要な文献・情報の収集も行う。
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