2012 Fiscal Year Research-status Report
ウェーブレット解析と精度保証付き数値計算技法の融合による画像数学の構築
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23540145
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
皆本 晃弥 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00294900)
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Keywords | 二重ツリー複素数離散ウェーブレット変換 / 区間演算 / 電子透かし / ダイアディック・ウェーブレット / 画像処理 / 音声処理 / 精度保証付き数値計算 |
Research Abstract |
本研究の目的は、精度保証付き数値計算で得られたアイディアをウェーブレット解析と融合させて新たな画像処理法を開発し、その技術に対する数学的な理論(画像数学)を構築することである。 この目的を達成するため、昨年度は、通常の離散ウェーブレット変換ではなく、シフト不変性をもつ2重ツリー複素数ウェーブレットとダイアディック・ウェーブレットの2つを中心に検討し、これらと区間演算を組み合わせて、従来のデジタル画像電子透かし法よりも画像圧縮や回転・拡大縮小といった攻撃に対して耐性のある電子透かし法の開発に成功した。この結果は、一見すると、画像処理とは無関係と思われる精度保証付き数値計算法の分野で開発された手法が、画像処理分野へ有効に適用された例として意義がある。 今年度は、この方法をデジタル音声へも適用できるよう改良した。これに加えて、デジタル画像の真正性を担保するために、改ざん検知が可能な電子透かし透かし法の開発を行った。今回開発した方法は、改ざんの有無を検知するだけでなく、その位置までもかなり正確に特定する、という特徴を持つ。また、改ざんの有無を検知するために原画像を必要とせず、改ざんされたと思われる画像(テスト画像)だけがあれば検知できる。さらに、入力された画像の特徴を利用して電子透かしを自動生成するため、原画像の画質劣化が少ない透かしを入れることができる。そのため、事前に透かしを用意する必要もなく高品質な電子透かし入り画像を生成できるため、ドライブレコーダーや防犯カメラなどにも組み込みやすく、結果として、それらで録画された画像の真正性が増し、ひいては証拠能力も増すことになる。 区間演算とウェーブレット変換の融合によって新たな電子透かし法が開発できたという事実は、これらの融合によって新たな画像処理技術の開発を示唆している、とも考えられ、この点においても重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画は、ダイアディック・ウェーブレットと区間演算を融合・発展させて新しい電子透かし法を開発すること、およびこの方法に関する数学理論の整備が目標であった。 今年度は、ダイアディック・ウェーブレットに基づいたデジタル音声への電子透かし法を開発しただけでなく、二重ツリー複素数ウェーブレット変換、ダイアディック・ウェーブレット変換、区間演算に基づく改ざん検知可能な電子透かし法を開発した。通常の電子透かし法だけでなく、改ざんおよびその位置を特定できる電子透かし法を開発しため、この点では当初の計画以上に進展している。しかしながら、数学的な理論部分の整備がやや遅れている。そのため、全体としては、おおむね順調に進展している、と判断する。現在開発している方法は、既存の方法よりも優れた点が多いが、計算時間についてのみやや劣っている。数学的な理論が整備されれば、演算の高速化も期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今までは、新しい電子透かし法を開発する、という点に力を注いできたが、その分、数学理論の整備が遅れていた。今年度は、数学理論の整備にも力を入れ、ダイアディック・ウェーブレット変換や二重ツリー複素数ウェーブレット変換と区間演算との融合がもたらす影響や結果を数学的に明らかにする。また、その結果に基づいて、高速アルゴリズムも開発する。また、最終年度ということもあり、得られた成果は、積極的に国際会議や国際論文誌で発表するよう努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を遂行しやすくするために、当初予定していた計算機システムだけでなく、複数のノートパソコンを同時に利用して並列して作業を行えるようにした。そのため、物品費が当初の予定よりも増えたため、旅費を抑えることで対応した。また、円高の影響で、当初予定していた金額よりも安く、国際会議へ参加・発表できた。その結果、旅費がややあまり次年度使用額が残ることとなった。 次年度は、最終年度ということもあり、この次年度使用額と請求した金額を合わせたものを、国際会議や国際論文誌で研究成果を発表するための旅費、論文掲載料、採択率を上げるための英文論文校正費などに主に利用する予定である。また、国内の学会・研究集会などにも参加し、引き続き必要な文献・情報の収集も行う。
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