2012 Fiscal Year Research-status Report
ハミルトニアンに基づく粒子法の非平衡統計力学的理論に関する研究
Project/Area Number |
23540166
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鈴木 幸人 早稲田大学, 理工学術院, 主任研究員 (90596975)
|
Keywords | 粒子法 / 連続体力学 / 解析力学 / 非平衡統計力学 |
Research Abstract |
昨年度に着想を得た非粘性流れのPoisson括弧に基づく粒子法についてその定式化の詳細を検討し具体的な計算アルゴリズムを開発した。この粒子法は非粘性流れのEuler記述におけるPoisson括弧による定式化をLagrange記述に引き戻し、基準配置を有限個の領域に離散化することによって得られたものであるが、その運動方程式は同様に離散化したEuler記述のHamiltonianを用いて正準方程式として表せることが判明した。従ってStoermer-Verlet法等のsymplectic数値時間積分法を適用することが可能であり、それによって各種保存量を離散化後も精度良く保存する計算手法を構築することができると期待される。ただしこのHamilton系は分離型ではないため、Stoermer-Verlet法を直接用いると位置と運動量のそれぞれの方程式が非線型となる。従って時間ステップあたりの計算量が大きくなることが予測されるが、今年度はとりあえず標準的なStoermer-Verlet法を適用して先に進むこととし、実際に計算コードを試作しアルゴリズムを検証する段階で再度検討することとした。またこの粒子法ではEuler記述のHamiltonianに現れる空間積分を行う必要があるが、それには粒子半径に依存した空間格子を設定し、その各立方体の中でGauss型の数値積分を行うこととした。以上の検討に基づき数値計算アルゴリズムを構築し計算コードを開発した。来年度はこの計算コードを用いて計算アルゴリズムの検証に着手する予定である。一方、昨年度に引続き非可逆過程を表す正定値対称作用素について検討した。この定式化を粒子法として自然に解釈できる道筋は未だ不明であるが、例えば上記のPoisson括弧に基づく粒子法のGauss積分点で評価する可能性など幾つかのアイデアを引続き検討する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非平衡統計力学的な検討に関しては、非可逆過程を表す正定値対称作用素の粒子法としての適切な解釈が見つからず、当初の計画通りの進捗が得られていない状況である。ただし、その検討の中でPoisson構造に基づく新たな粒子法の着想を得ることができ、今後それを実用段階まで発展させることができると見込んでいる。この新たな粒子法により、本研究の目的の一つである数値振動の抑制が達成できると予測しており、その意味で全体としては概ね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
Poisson構造に基づく粒子法の検証計算を行いその有効性を確認する。まずは(流れのLagrange記述における)Hamiltonianに基づく粒子法との比較・検討を行い、その特性を評価する予定である。同時に非可逆過程を表す相空間上の正定値対称作用素に関して引続き調査・検討を行い、その粒子法への適用方法を探る予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
検証計算用のコンピュータの購入費、文献調査の対象あるいは理論研究の補助となる論文・図書の購入費、学会参加および技術打合せのための旅費、学会誌投稿料等の研究成果発表費用など。
|