2011 Fiscal Year Research-status Report
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23540168
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Research Institution | Shonan Institute of Technology |
Principal Investigator |
中上川 友樹 湘南工科大学, 工学部, 准教授 (20386890)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 離散数学 / 組合せ論 / ラムゼー理論 |
Research Abstract |
次の結果を得た。G,H を多重辺やループを持たない無向グラフとする。G が含みうる互いに点素かつ H と同型な誘導部分グラフの最大個数を N(G,H) とする。またH*がグラフの族であるときN(G,H*)=max {N(G,H):H∈H* }と定義する。さらに、頂点数が s 以上のすべてのグラフ G について N(G,H*)≧n を満たすような最小の正整数 sをグラフの族 H* についての n-重複ラムゼー数 r(n,H*) と定義する。目標は与えられたH* に対して、主として n 十分大きい場合にr(n,H*) を決定することである。K_kを頂点数 k の完全グラフとする。また、グラフ G の補グラフを Gc と書く。先行研究の一つとしてグラフラムゼー理論における古典的な結果がある:n≧2のとき r(n, {K_3, {K_3}c}) = 5n が成り立つ[Burr-Erdos-Spencer,1975]。 2つのグラフG1, G2 に対する和および結合をそれぞれ G1∪G2, G1+G2 と書く。当該年度に得られた主定理は、次の通りである。定理1.1≦m≦k-2 とする。B*_{k,m} = { K_k, {K_k}c, K_m+{K_{k-m}}c, {K_m}c∪K_{k-m} } と置くとき、r(n, B*_{k,m}) = (2k-1-(m/k))n + O(1) が成り立つ。□定理1は、既に証明されていた m=1 の場合[Nakamigawa,2007]を拡張したものである。H はどのB*_{k,m} にも含まれないk頂点のグラフとする。B*(H)= { K_k, {K_k}c, H, Hc } と置く。このとき容易に、r(n, B*(H)) = (2k-1)n + O(1) が成り立つことがわかる。つまり、定理1はある意味で十分な一般性を備えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では、本研究(ラムゼー型分割問題の研究)の研究対象を次のように分類している;(1)着色点集合、(2)グラフ、(3)その他の離散構造、の3つである。(1)着色点集合については、新たな進展はなかった。ただし、以下の(3)で述べる枠組みでの研究を開始した。(2)グラフについては、「研究実績の概要」で述べたように対象とするグラフの族をB*_{k,m} = { K_k, {K_k}c, K_m+{K_{k-m}}c, {K_m}c∪K_{k-m} } とした場合にr(n, B*_{k,m}) を漸近的に決定した。頂点数 k のグラフ全体からなるグラフの族を G*_k と書く。 今回の結果の系として、r(n, G*_4) の新たな上界 13n/2 + O(1) を得た。r(n, G*_4) の現在の下界は 6n + O(1) である。r(n, G*_4) の決定に向けて、r(n, G*_4) のより良い下界を探索する計算機実験を開始した。(3)その他の離散構造については、ハイパーグラフについて研究を開始した。一つの問題設定は次の通りである。b,k,mを正の整数とする。互いに辺素かつ同型なk辺からなるΔ-システムを必ずm組含むようなb-一様ハイパーグラフ(各辺の含む頂点数がbであるハイパーグラフ)の必要最小辺数を求めることを目標とする。b=1,2の場合はそれぞれ着色点集合,グラフを対象とすることに相当する。なお、関連する離散数学分野の研究として、(a)グラフ上の石交換に関する問題、(b)格子路に関する数え上げ問題、および(c)階層型ネットワーク上の経路に関する研究、についてそれぞれ進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究(ラムゼー型分割問題の研究)の3つの研究対象(1)着色点集合、(2)グラフ、(3)その他の離散構造、に分けて述べる。(1)着色点集合については、その他の離散構造の研究に統合する形で研究を進めていく。(2)グラフについては、当該年度の研究をまとめた上で、学会発表することを予定している。また、さらに研究内容を発展させる。現時点で考えている問題設定は次のとおりである。(2)-1 グラフを辺着色グラフへと拡張,(2)-2 対象とするグラフの族の拡張,である。また,r(n, G*_4) の下界探索の計算機実験をより本格的に実施する。(3)その他の離散構造については、当該年度に開始したハイパーグラフのΔ-システムへの分割についての研究を進める。なお、上記の主テーマに加えて関連する離散数学分野の研究として、(a)グラフ上の石交換に関する問題、(b)格子路に関する数え上げ問題、および(c)階層型ネットワーク上の経路に関する研究、を中心に研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、おもに旅費に充てる。本研究の内容は、内外の研究者にとって必ずしも広く知られていない。このため、得られた成果を早期に公開していくとともに、関連研究の状況を把握していくことが重要になる。従って、学会、研究集会等の参加および成果発表を行う。なお、現時点では個人的な事由(同居家族の介護)により長期間の出張が困難な状況にある。このため、比較的所要日数の少ない国内の学会に絞って参加する予定である。現在参加を予定している学会、研究集会は、次の通りである。RIMS共同研究「デザイン、符号、グラフおよびその周辺」(H24年7月:於京都大学数理解析研究所)、日本数学会秋季総合分科会(H24年9月:於九州大学)、応用数学合同研究集会(H24年12月:於龍谷大学)。また、国内の研究者との打合せ、および共同研究を行なう。
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