2011 Fiscal Year Research-status Report
サポートの分離・併合から見た界面ダイナミクスに対する数値解析
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23540171
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
友枝 謙二 大阪工業大学, 工学部, 教授 (60033916)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 応用数学 / 自由境界 / サポート分離併合 / 界面ダイナミクス / 差分法 |
Research Abstract |
本研究では、「サポート・ダイナミクス」の一つである「蒸発と拡散を伴う流れに現れる浸透領域の変化」を数値的に再現することを目的とする。具体的には、周期的流入・流出を伴う境界条件を課した時に現れるサポートの分離・併合またはその反復性について扱い、このような現象の発生メカニズムを解明する数値計算法を構築することである。当該年度(23年度)は以下のことを実施した。1 蒸発過程での浸透領域の変化を記述する数理モデルは初期境界値問題として定式化され、これに対する「Interface直接近似法」と「階段関数的メッシュ生成法」の2つのサポート追跡法による計算法を次の項目に留意して構成した。・2つのサポート追跡法では不等間隔メッシュを生成する必要がある。 ・不等間隔メッシュ上での非線形双曲型方程式に対するRiemann問題の数値解法であること。2 1で構成した計算法を用いて次の点について数値実験を行なった。・最初にRiemann問題を解く数値ソルバーが理論的に正しく動作することを確認した。・ワークステーションを用いて、境界条件が定数の時にその定常解を数値的に探しながら数値的安定な計算法、そのメッシュ幅、時間ステップを探した。特に数値的に収束していく定常解の候補が見つけられた。3 定常解に関する数学理論の準備を行なった。その結果、正の定常解と零点の発生する定常解が区間の幅に依存することが数学的に証明された。前者はサポート併合を意味する定常解であり、後者の解はサポート分離を意味する。定常解の一意性・安定性は現在考察中である。以上のことについて「Interface直接近似法」は、数値的に安定に動作し現象と整合性のある数値結果を与えることが分かった。「階段関数的メッシュ生成法」については、 現在数値計算で検証中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研申請にあたって必要な数学モデルの構築、数値計算法の構成法について調査し準備を行っていたので、当初年度(23年度)の計画は予定通りに進んだ。また数学解析については困難さが予想され、その解決を研究2年後に予定していたが、偶然その糸口が見つかった。これは予想しなかったことである。一方「階段関数的メッシュ生成法」については アルゴリズムが非常に複雑なのでその検証に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度(23年度)においては予想していたよりも順調に進めることが出来た。今後は幾つかの困難さが予想されるが、それに対する対策も準備し、更に新しい方向性も模索しながら当初の計画に従って進めていく。即ち当該年度(23年度)に得られた2つのサポート追跡法を用いて「蒸発と拡散を伴う流れに現れる浸透領域の変化」をサポート・ダイナミクスの観点から数値的に再現することを目的とする。具体的には以下の通りである。1) 固定境界条件を与えたときに得られつつある定常解を分類しその定常解に対して数学的証明、すなわち存在と一意性を証明する。時間発展の解が時間を無限大にしたときこの定常解に収束することを数値的に更に確かめる。この収束性すなわち解の安定性をも証明する。次に 周期的流入・流出を伴う境界条件を課したときに現れるサポートの分離・併合を調べる。特に境界条件の時間的周期性とその振幅がサポートの分離にどのように影響を与えているかを数値的に調べる。周期性と振幅の関係、例えば、振幅を一定にしたとき周期が短くなるほどサポート分離が起こり易いのか否かを数値的に探る。2) 得られた2つのサポート追跡法「Interface直接近似法」と「階段関数的メッシュ生成法」について、その優劣を調べる。更に空間メッシュをゼロに近づけたとき、その数値解の安定性と真の解への収束性を考察する。「階段関数的メッシュ生成法」については数学的証明の困難さが予想されるが、それに反して「Interface直接近似法」については十分可能性があるので、次年度(24年度)はこれについて証明を確立する。構築された計算法の空間2次元への拡張を行ない、サポート分離・併合を調べる。3) 海で囲まれた島の内陸部の浸透領域をシミュレートし、現実問題にどの程度貢献できるかを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度(23年度)については予想していたよりも順調に進めることが出来た。その結果、物品費、旅費、人件費において次年度(24年度)使用金額が若干生じた。このことを踏まえて以下の使用計画に沿って研究を遂行する。1) 今後の推進方策で述べた項目1)を行うには数学的な議論が必要である。そのためには生物モデル、燃焼モデルに現れる進行波解の漸近挙動及び定常解の安定性等を主テーマとしている反応拡散系の国内研究者の知見を必要とする。特に 彼らとの議論のための国内旅費が不可欠である。推進方策で述べた項目1),2),3)を行うには、初年度(23年度)に購入したワークステーションを活用する。コンピュータシミュレーションを通して得られる多量な数値データとその画像処理データの蓄積のために物品費でハードディスクを増設する。更に2つのサポート追跡法「Interface直接近似法」と「階段関数的メッシュ生成法」の数学的保証を与えるためには、有限要素法の数学理論の専門家による評価及び知見が必要とされる。そのための研究連絡打ち合わせを予定している。数値計算結果の吟味には2名の連携研究者との研究打ち合わせも不可欠である。2) 現在 得られつつある成果については自由境界問題及び数値解析関連の国際会議や研究集会等で発表し、その評価を受ける予定である。そのための海外旅費、さらに研究発表に新たなノートパソコン(これまで使っていたノートパソコンが古くなり容量不足のため更新)が物品費として必要となる。3) 推進方策で述べた項目3)について 環境工学分野の研究者からの知見をも集めて進めていく。
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Research Products
(5 results)