2011 Fiscal Year Research-status Report
フェーズフィールドモデルを用いた亀裂進展現象の解析
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23540174
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Research Institution | Hiroshima Kokusai Gakuin University |
Principal Investigator |
高石 武史 広島国際学院大学, 情報学部, 教授 (00268666)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 数理モデル |
Research Abstract |
・申請者らの提案したフェーズフィールドモデルの妥当性の検討として,正則化パラメータと亀裂断面プロファイルの関係について調べた.モードIII(面外変形)亀裂進展において,亀裂進展と垂直な方向でのフェーズフィールドが満たす方程式から数値的にプロファイルを求め,正則化パラメータが小さくなることで領域内のほとんどの点においてフェーズフィールド(z)が亀裂部分(zがおよそ1)とそれ以外(zがおよそ0)になることが確かめられた.また,このモデルでは亀裂の非修復条件をかけているが,実際に数値シミュレーションすることで,亀裂の進展に伴いフェーズフィールドの断面プロファイルが上記平衡解のプロファイルへ漸近していくことが確かめられた.・フェーズフィールドモデルの微細な亀裂の進展への応用にあたり,岡山大学塚田氏,三造試験センター井上氏,横浜国立大学角氏らと議論を行った.疲労の亀裂進展の観点から,繰り返し応力の変動によるダメージの蓄積がこのモデルで表現できれば,亀裂の経路予測や材質の寿命の評価を可能にするのではないかと考えられるとの結論に達した.これらの検討におけるプレゼンテーションのためにノートPCを購入し活用した.・3次元亀裂進展のための計算コードのベクトル変数対応版については,従来スカラー版で使用していたALBERTAtoolboxをベースにしたもの(ALBERTA toolbox版)と並行して,早稲田大学野津氏の開発した有限要素コードをベースにしたもの(野津版)の開発を行った.ALBERTAtoolbox版では従来のスカラー変数コードをversion3用にアップデートする作業を行い,ほぼ完成した.野津版ではベクトル変数での亀裂進展コードの作成を進め,こちらも完成が近い.また,野津版についてGPU対応させ稼働を確認した.コード開発のためにPC用メモリとネットワークファイルサーバを購入した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・フェーズフィールドモデルの妥当性については,亀裂進行速度についての解析はできなかったものの,亀裂の本数と対応する亀裂断面解,さらに正則化パラメータとのフェーズフィールドのプロファイルの関係については知見が得られ,このモデルで亀裂進展を表現するための妥当性の確認は前進した,しかし,三造試験センターにおける検討において,亀裂進展現象へのモデルの妥当性検証のための対比実験については,実験の容易な鋼では脆性破壊の条件が満たせないことや,純粋なモードIIIの亀裂進展実験は技術的に困難であるとの指摘があった.一方,セラミック板によるモードI(亀裂開口)亀裂進展の形状比較が可能ではないかとの意見が出され,今後の比較実験の指針が得られた.・微細な亀裂の進展への応用については,未だ実験との対応・確認はできていないものの,疲労による亀裂進展を十分表現できる能力があることがわかった.・数値計算コードの開発については,本命であるALBERTAtoolbox版のベクトル変数対応が遅れているものの,野津版において既にGPU化が進んでいるため,一部は予定よりも先行している.また,有限要素法コードのGPU化に先立ち,反応拡散方程式の差分法コードにおいてGPU化の手法を確認しており,この結果は既にWeb上でソースとともに公開している.以上より,方針を多少見直したところがあったり,遅れている部分があるものの,前倒しになった研究もあることから,本研究はほぼ順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
まずベクトル変数版のコードの完成を急ぎ,3次元亀裂進展の数値計算を実施する.野津版のコードについては,開発者の野津氏と連携しながら,優先的にコードを作成する.3次元亀裂進展については,欠陥が点から線,そして面へと成長していく過程の再現を目標とする.また,その分岐に注目しながら,現象と比較できる例を用いて数値計算を行い,その結果を検討する.3次元の数値計算結果の検討においては,その可視化が必要であり,平成25年度に予定している,亀裂の3次元立体可視化の方法と機材についても検討を始める.尚,これらの数値計算コードに関する成果は,順次web上で公開していくものとする.微細な亀裂の進展については,このモデルでのエネルギーの表現がどこまで微細亀裂を表現し得るか検討を進め,そこから,このモデルにおける亀裂面のエネルギーの評価の適用範囲と,さらに,応用範囲について,研究会や勉強会等に参加しながら国内外の研究者と意見交換を行う.また,従来のコードを用いた数値計算も並行して行い,多数の亀裂が発生する場合,材質の初期状態に空間的な揺らぎが存在する場合についての亀裂進展のプロセスの解析を行う.モデルの妥当性の検証については,次年度以降も引き続いて比較実験と亀裂進展解の理論解析の両面から検討を行っていく.比較実験については,まず,セラミック板を用いたモードI亀裂における形状比較の可能性を検討する.理論解析については,連携研究者である九州大学木村氏とともに再度検討を行い,成果を公表できるようにまとめる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・ベクトル変数コードを完成させ,3次元亀裂進展の数値計算を実施する.大規模な数値計算に伴い大量の計算結果を保存し,解析する必要があるため,平成23年度に購入したネットワークファイルサーバで利用するためのハードディスクドライブや,データバックアップ用メディアを購入する.・微細な亀裂や3次元の亀裂進展の数値計算における計算量増大に対応するため,計算コードの主要部分のGPUを用いたコードへの書き換え作業と,実行テストを実施する.GPUを利用した計算コードの開発と,大規模な数値計算の実施のため,計算システムとして数値計算用GPUカードを導入したPCを新規に購入し利用する.ただし,購入予定であった数値計算用次世代GPUカードの発売が次年度第4四半期と遅れる可能性もあり,その場合は最適な購入時期と最適な機種を検討することとする.・国内外の研究者と研究成果と今後の研究方針について議論を行うために学会,研究会での発表を行い,そのために国内および国外旅費を利用する.特に,連携研究者である九州大学木村氏,早稲田大学野津氏と定期的に研究連絡を行う予定である.さらに次年度は,フェーズフィールドモデルの妥当性に関する研究成果を公表する予定であり,そのための投稿料などが必要である.
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