2012 Fiscal Year Research-status Report
フェーズフィールドモデルを用いた亀裂進展現象の解析
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23540174
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Research Institution | Hiroshima Kokusai Gakuin University |
Principal Investigator |
高石 武史 広島国際学院大学, 情報デザイン学部, 教授 (00268666)
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Keywords | 数理モデル |
Research Abstract |
・3次元亀裂進展に関するモデルについて,Francfort-Marigo タイプのエネルギー表式から導出される時間発展方程式を再チェックし,これを採用することとした.このモデルを用いた3次元の数値計算については,インプリメントの容易な早稲田大学野津氏の有限要素コードをベースに利用することにし,実際にコードをテスト実行し数値計算が可能であることを確認できた.また,前年度既に着手していたGPUによる高速化のテストも並行して行った.今年度導入した数値計算システムにおいて,CPUのみで計算する場合と行列ソルバーのみGPUで計算する場合について速度の評価を行なった結果あまり差異がみられなかったが,GPU版はチューニングによってさらに高速化することが期待される. ・フェーズフィールドの中間的な値を用いた微細な亀裂進展の研究については,まず理論面から,我々の用いているモデル方程式においてフェーズフィールドが中間的な値をとった場合にどのような解が存在するのか調べた.モードIII亀裂が直進する場合を想定し,その断面方向の平衡解のプロファイルを検討したところ,ベースとなるフェーズフィールドの値の上昇に伴い亀裂の本数が増加していくことがわかった.この結果から微細な亀裂を全面に含んだ材料では同時に多数の亀裂が進展することが裏付けられ,微細な亀裂を持つ材質での研究に適用可能であることが示唆された.また,研究交流より,フェーズフィールドの中間的な値をダメージとして捉えた場合に地質学における断層面でのき裂進展と対応できる可能性や,ゲルの亀裂進展へのモデルの拡張の方法などに関する知見を得た. ・これらの研究成果を日本応用数理学会,国際研究集会ARGORITMY2012,応用数学合同研究集会,数学者と地震学者の破壊力学研究会,その他ワークショップ等で発表し,研究内容について議論を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・3次元亀裂進展に関するモデルについては,既に導出していた方程式を再チェックし,野津版のコードへのインプリメントがほぼ完了した.また,同時にチェックのために FreeFem++での計算コードもインプリメントを進めている.ALBERTAツールボックスを用いたアダプティブメッシュ有限要素コードのインプリメントについてはまだ完了しておらず,次年度での完成を目指すこととなった.計算コードの高速化については,CUSP-libraryによるGPUでの行列計算は組み込んだものの,計算速度はまだチューニングの余地を残している. ・微細な亀裂進展の解析については,1次元き裂断面平衡解の解析の結果が我々のモデルにおけるフェーズフィールドが中間的な値を取る場合として取り扱える可能性を示したのみならず,他分野との研究交流より,地震における亀裂近傍の損傷の蓄積の重要性に関する知見が得られたこと,ゲルの亀裂進展へ適用する可能性が見出されたことから,研究を発展させる方向性が広がった. ・3次元亀裂進展数値計算の実施については,まだテスト実行の段階にとどまっており,次年度は適用する問題をしぼって数値計算を実施する必要がある. 以上より,次年度の研究の中心となる3次元問題への数値計算の適用が遅れているものの,その他の課題はほぼ達成されており,また,研究をすすめる上での新しい方向性も見出せつつあることから,総合的にはほぼ計画通りに進んでいると評価される.
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Strategy for Future Research Activity |
・次年度は3次元亀裂進展の数値計算の実施を研究の中心とし,適用する問題を早急に絞って研究を行ない,3次元の亀裂進展におけるこのモデルの適応性を検証する.3次元数値計算コードの早期完成を目指し,実際に数値計算を始めると共に,高速マトリックスソルバーの導入検討を行う.また,今後必要性が見込まれるアダプティブメッシュ有限要素法のコードの開発も並行してすすめる. ・3次元亀裂進展の数値計算結果では亀裂の多くは材料内部でに存在し,3次元の複雑な構造を取るため,亀裂がどのような形状をになっているか直感的に理解するのは難しい.そこで,データの解析を補助するための3次元亀裂可視化用の簡易手法を開発する.通常のPCにいくつかの可視化器材を導入することで利用でき,また,用意に拡張可能なツールを作成する. ・微小亀裂の概念をもう少し広げ,ダメージという観点から亀裂進展現象の解析を行なっていく.特に,地震やゲルなど,他の材質での亀裂進展モードにおけるフェーズフィールドモデルを検討する.ゲルについてはMaxwell流体を念頭に置き,横浜国立大田中氏,理化学研究所佐藤氏等と議論を重ね,モデルの拡張を行い,実験とモデルの数値計算の両面から研究をすすめる.また,ここでは,2次元での各モードでの亀裂進展を調べることも重要となる. ・九州大学木村氏と共に,フェーズフィールドによる亀裂進展モデルの研究の数理的な側面においてこれまでに得られた知見を整理し,成果を学術誌に公表する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・3次元数値計算コード完成させ,平成24年度に導入した数値計算用システムを用いて3次元亀裂進展の数値計算を実施する.大規模な数値計算に伴い,大量の計算結果を保存し,解析する必要があるため,平成23年度に導入したネットワークファイルサーバ用のバックアップハードディスクドライブや,データバックアップ用メディアを購入する. ・3次元亀裂進展の数値計算実施においては,結果の解析方法の確立が重要である.通常のPCにおいて自作プログラムで容易に3次元可視化できる方法を探り,実際にツールを作成する. 可視化ツール作成にあたり,可視化システムとして,可視化用PC,3次元可視化用液晶ディスプレイと可視化キットを新規に購入し利用する. ・国内外の研究者と研究成果について議論するため学会,研究会での発表を行い,そのために国内及び国外旅費を利用する.特に連携研究者である九州大学木村氏(2013年4月より金沢大学),早稲田大学野津氏と定期的に研究連絡を行う予定である.また,次年度は横浜国立大学田中氏とゲルにおける亀裂進展のモデル化についての検討も行う予定である.さらに,次年度は,これまでの知見を整理した研究成果を公表する予定であり,そのための投稿料などが必要である.
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Research Products
(4 results)