2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540176
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Research Institution | Oyama National College of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 巌 小山工業高等専門学校, 一般科, 教授 (70154036)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | グラフ / ゼータ関数 |
Research Abstract |
先ず、グラフやdigraphの2変数のBartholdi関数を、3変数以上のBartholdi関数に一般化して、その行列式表示を与え、正則被覆グラフや正則被覆digraphについて、その分解公式を求める。そして、弧に重みを付けた重み付きBartholdi関数や、その他のタイプの重み付きBartholdi関数に拡張する。特に、弧に行列の重みを付けた重み付きBartholdi関数を考え、その行列式表示を与える。また、それらをhypergraphに適用して、3変数以上のBartholdi関数や、重み付きBartholdi関数の行列式表示を与える。Lapidus達が得た、無限グラフのゼータ関数を、無限digraphのBartholdiゼータ関数に拡張する。Winnie Li等が与えたPGLn(F)(Fは非アルキメデス的局所体)のBruhat-Tits buildingのゼータ関数を、Bartholdiゼータ関数に一般化する。さらに、いろいろなグラフゼータを利用して、砂田によるリーマン多様体の類体論等の被覆グラフ版を模索する。 物理と量子グラフとの関連では、digraphのゼータ関数の行列式表示を応用として、digraphのscattering matrixを定式化して、Smilanskyの公式を一般化する。また、 quantum graphのscattering matrixに関する行列式の種々の公式の別証明等、物理への応用を込めた、グラフゼータの新しい方向付けを考えたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、グラフと被覆グラフのゼータ関数について、以下の結果を得た。 (1)quantum graphの概念である、グラフGの重み付きscattering matrixを一般化して、Gの新たな重み付きBartholdiゼータ関数とBartholdi L-関数を導入して、それらの行列式表示を与え、Gのregular coveringの新たな重み付きBartholdiゼータ関数を、Gの新たな重み付きBartholdi L-関数の積で表した。論文として、Far East Journal of Mathematical Sciencesに掲載された。(2)Chang and Langlandsによって定義された、Gのvertex weigthed complexityを考え、Gの一般のcoveringのvertex weigthed complexityの分解公式を与え、それをGのvertex weigthed complexityで表示した。論文として、Algebra Collquiumに掲載された。(3)digraph Dのline digraph L(D)のedge weigthed complexityとvetex weigthed complexityをDのそれらで表すLevineの定理の別証明を、L(D)の特性多項式を用いて与えた。論文として、Linear Algebra and its Applicationsに掲載された。(4)重み付き半正則2部グラフGの第2種ゼータ関数とL-関数の分解公式を与え、Gのregular coveringの第2種ゼータ関数を、Gの第2種L-関数の積で表した。論文として、Ars Combinatoriaに掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究では、整数論やquantum graphの知識が必要なため、グラフゼータに絡む整数論、quantum graphや、統計物理に離散数学の絡む専門書を購入したい。グラフゼータとその周辺の研究は、今、数学の中だけでなく、物理の分野と深い、繋がりがあることが判明しつつあり、グラフゼータを含む領域の国際シンポジウムに出席して、最新の情報を手に入れたい。具体的には、(1) quantum graphの文献を読み、digraphのscattering matrixを導入して、Smilanskyの公式のdigraph版を導き、新たなdigraphのゼータ関数を定義する。また、新たにグラフの一般的なscattering matrixを模索する。(2) 関数解析の本を読んで、作用素の行列式について勉強し、新たな無限グラフのBartholdiゼータ関数の行列式表示を模索する。(3) hypergraphのn変数Bartholdiゼータ関数を定式化し、hypergraphのcoveringの概念を確立して、そのゼータ関数を調べる。(4)PGLn(F)のBruhat-Tits buildingのゼータ関数の行列式表示を、Bartholdiゼータ関数に一般化する。(5)正則グラフと半正則2部グラフの重み付きゼータについてセルバーグ型の跡公式を導き、極の偏角の分布を考察する。(5)いろいろなグラフゼータを利用して、2次体の整数論や、砂田によるリーマン多様体の類体論等の被覆グラフ版を模索する。(6)いろいろなグラフゼータや、Smilanskyの手法、渡辺&福水の手法を用いて、hypergraphのcoveringのBethe free energyのヘッシアンの分解公式、quantum graphのscattering matrixに関する行列式の種々の公式の別証明等、物理への応用を考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)一般のグラフのn(≧4)変数のBartholdiゼータ関数とBartholdi L関数を導入し、その行列式表示を求め、グラフの正則被覆グラフのn変数Bartholdiゼータ関数を、グラフのn変数のBartholdi L関数の積で表す。(2)グラフのn変数Bartholdiゼータ関数を、digraphのn変数Bartholdiゼータ関数や、グラフやdigraphの重み付きBartholdiゼータ関数に拡張する。(3)グラフGのscattering matrixをdigraphに拡張して、Smilanskyの公式のdigraph版を導き、上で述べたものとは異なる、digraphのゼータ関数を導く。(4)グラフゼータと整数論のゼータ関数の類似性を利用して、整数論と被覆グラフの類似な性質を導き、2次体の整数論の被覆グラフ版を考える。(5)いろいろなグラフゼータの行列式表示を利用して、quantum graphのscattering matrixに関する行列式の種々の公式の別証明を与え、物理への応用を込めた、新しい方向付けを考える。(5)periodic simple graph等のdigraph版のゼータ関数を考える。(6)グラフの重み付きゼータ関数、重み付きL関数に関するセルバーグ型の跡公式を、正則グラフ、半正則2部グラフについて求め、正則グラフ、半正則2部グラフの重み付きグラフゼータに対し、極の偏角の分布について、「半円則」の類似が成立するかどうか考える。(7)統計物理と離散数学の専門書を読んで、グラフゼータとグラフのIsingモデルの分配関数、その他のグラフの多項式(matching多項式等)との関係の可能性を探る。 グラフゼータを含む領域の国際シンポジウムに出席して、最新の情報を手に入れる。成果が出たら、日本数学会、国際シンポジウム等で発表し、論文にまとめて投稿する。
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