2011 Fiscal Year Research-status Report
不動点理論と凸解析学を介した非線形関数解析学と非線形問題の究明
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23540188
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高橋 渉 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 名誉教授 (40016142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 雅治 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (30260623)
木村 泰紀 東邦大学, 理学部, 准教授 (20313447)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 非線形関数解析 / 凸解析 / 不動点 / 最適化 / 非線形作用素 / 均衡点 / 不動点アルゴリズム / バナッハ空間 |
Research Abstract |
本研究は、不動点理論と凸解析学を介して、均衡問題や最小化問題などの非線形問題の解の存在と、その近似に関する問題を究明することを目的としてなされた。集合値写像の研究では、極大単調作用素の3つのリゾルベントのうち、研究代表者の研究によって発見された相対リゾルベントや擬非拡大リゾルベントの収束定理を研究し、極大単調作用素の零点を求めるハイブリッド型による強収束定理を得ることに成功した。また擬非拡大リゾルベントから導入される擬サニー非拡大射影を用いて、確率論に現れる条件期待値に関係する結果も得た。ヒルベルト空間の増大作用素のリゾルベントの研究では、そのリゾルベントの性質から非拡大写像とノンスプレッド写像、ハイブリッド写像が定義されるが、これらの写像を統一する新しい非線形写像を定義し(この写像を一般的ハイブリッド写像と名づけた)、その写像の不動点定理や不動点を求める弱収束定理、および強収束定理を証明することに成功した。この写像の不動点定理や収束定理はバナッハ空間の場合でも証明できた。さらに、この写像の考えを距離空間の場合にも応用し、これまで個々の写像で証明されていた不動点定理を統一した形で証明した。非線形エルゴード定理の研究では、不動点の概念を一般化する点(アトラクテブポイント)を定義し、一般的ハイブリッド写像の凸性を仮定しない平均収束定理を証明することに成功した。これはバイロンによって1975年に初めて証明された非線形エルゴード定理を大幅に一般化するものである。これらの結果は、国内外の研究集会で口頭発表され、また国際雑誌に公表されたが、非常に関心がもたれた。また最近諸外国でたくさん引用され始めたことを報告しておきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの準備や知識が十分貯えられていたことに加え、科学研究費を使って大量の文献収集やその整理、ならびにこの研究に興味を持っている他大学の研究者との数多くの研究打ち合わせや討論が功を奏した結果であろうと思われる。また、研究のために時間を十分使えたことも主な理由である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成 23 年度の研究に引き続いて、今後の研究を以下の順序で推進する。(1) ヒルベルト空間の2変数関数で、第1変数に凸で下半連続を仮定し,第2変数に凹で上半連続を仮定した場合、第1変数の劣微分と第2変数の劣微分の積を考えると、それは極大単調作用素となる。また、2変数関数の鞍点はその極大単調作用素の零点とも同値になる。このことは、凸解析学の理論を使うとバナッハ空間でも成り立つ。バナッハ空間で2変数関数の鞍点の存在と鞍点をもとめる近似法を研究するとともに、鞍点とバナッハ空間の幾何学的性質との関連をも研究する。(2) これまで研究代表者の研究によって、非線形作用素に対して双対写像が一般に定義され、ノンスプレッド写像とスキュ-ノンスプレッド写像の間には双対性が成り立つことが証明された。非線形作用素に対して、さらに双対性の理論を展開し、種々の非線形作用素の間の不動点や収束性の関係等を研究する。(3) 線形作用素の双対写像と上記の非線形作用素の双対写像の間には、研究代表者のこれまでの研究によって不動点集合を介して、ある種の興味ある関係がある。しかしながら直接計算できる関係は見つかっていない。非線形作用素が線形作用素であるときの双対写像と、線形作用素のもともとの双対写像の関係についても研究を行う。(4) 米国の数学者レイは、ヒルベルト空間の閉凸集合が有界となる必要十分条件は、その上で定義される非拡大写像がすべて不動点をもつことであるということを証明した。この後この定理はバナッハ空間にまで拡張できるのではないか、という問題がもちあがった。研究代表者により、ノンスプレッド写像については 30 年の年月を経てバナッハ 空間までうまく拡張されたが、非拡大写像については依然として未解決のままである。この問題は、バナッハ空間の幾何学との観点からも重要であるので、その問題の解決を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は研究費の使用が遅れたために、日程の調整がうまくいかず、特に外国へ行っての研究者との情報交換や討論、及び外国から来てもらっての研究者との情報交換や討論が予定通り進まなかった。そのために執行額に残額が生じた。次年度は、今年度できなかった外国の研究者との情報交換や討論を行うとともに、今後の研究をスムースに推進するための文献収集やその整理を行うために科学研究費を使う。さらには、この研究に興味を持っている他大学の研究者との研究打ち合わせや情報交換のためと、本研究では多くの成果が得られるので、それを国内外で公表するための旅費に科学研究費を使う。
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Research Products
(31 results)