2011 Fiscal Year Research-status Report
測度の弱収束を用いた非加法的測度の作る空間の位相構造の研究
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23540192
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
河邊 淳 信州大学, 工学部, 教授 (50186136)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 非加法的測度 / ショケ積分 / 測度の弱収束 / レビ収束 / Riesz型積分表示 / Portmanteau定理 / 漸近平行移動可能性 / 測度の正則性 |
Research Abstract |
1.関数空間の正錐上で定義された共単調加法的汎関数のショケ積分表示: Grecoにより得られたDaniell-Stone型の積分表示定理における複雑な条件を再検討し,局所コンパクト空間上のコンパクトな台をもつ非負実数値連続関数空間や,無限遠点で消滅する非負実数値連続関数空間上などの関数空間の正錐上で定義された単調かつ共単調加法的な汎関数は,応用上十分な正則性をもつ非加法的測度のショケ積分で一意的に表されることを示した.2.関数空間上で定義された共単調加法的汎関数のショケ積分表示: 局所コンパクト空間上のコンパクトな台をもつ連続関数空間や,無限遠点で消滅する連続関数空間など,必ずしも正錐でない関数空間上で定義された汎関数のショケ積分表示可能性問題は,これら関数空間が定数関数を含まない場合は,ショケ積分の非対称性に起因した困難さのため,未解決であった.そこで,まず,汎関数に単調性と共単調加法性を仮定しただけでは,ショケ積分表示できない例を構成した.さらに,漸近平行移動可能性の概念を新たに導入し,単調かつ共単調加法的汎関数のショケ積分表示可能性と,漸近平行移動可能性が同値であることを示した.3.非加法的測度空間上の測度の弱位相に関するPortmanteau定理: 距離空間上のある種の連続性をもつ正則な非加法的測度の有向列に対して,GirottoとHolzerが導入した強正則集合の概念を活用することにより,Levy収束の概念を定義する際に必要な連続集合の概念を定式化し,測度の弱収束とLevy収束の概念の有効な定式化に成功した.さらに,強正則集合の性質をより詳細に調べ,測度の弱収束性とLevy収束性が一致することや,Levy収束により定まる位相が可分に距離付け可能であるための必要十分条件は,測度が定義されている距離空間自身が可分に距離付け可能であることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究課題の研究計画のうち,「測度の弱収束とLevy収束の定式化とPortmanteu型定理の定式化」の研究については,ほぼ当初の予定通りの成果が得られ,研究成果をまとめた論文「Metrizability of the Levy topology on the space of nonadditive measures on metric spaces」は,国際専門誌「Fuzzy Sets and Systems」に出版予定である. また,「関数空間上の共単調加法的汎関数の積分表示」の研究に関しても,その特別な場合として,汎関数が局所コンパクト空間上で定義されたコンパクトな台をもつ実数値連続関数空間や,無限遠点で消滅する実数値連続関数空間の正錐上で定義されている場合には完全に解決し,論文「共単調加法的汎関数のRiesz型積分表示定理」が,国内専門誌「知能と情報」に出版された.さらに,正錐とは限らない一般の場合の結果については,関連論文の投稿を準備している.
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Strategy for Future Research Activity |
下記の課題について,申請時の研究計画・方法に基づき,研究を推進する:1.Levy-Prokhorov型距離とRao型距離の定式化と,距離付け可能性問題の解決 距離空間上の非加法的測度空間上に,Levy位相を距離づけるLevy-Prokhorov型距離と,測度の弱位相を距離づけるRao型距離を導入し,今回の研究で定式化したPortmanteu定理を利用して,非加法的測度空間の距離付け可能性問題の解決を目指す.2.抽象関数空間上で定義された共単調加法性汎関数のショケ積分表示定理の定式化 有界関数空間や連続関数空間などの具体的な関数空間ではなく,抽象関数空間上で定義された共単調加法的汎関数のショケ積分表示定理は,Stone束などの定数関数を含む場合には,すでに解決している.一方,今回の研究対象であった,局所コンパクト空間上のコンパクトな台をもつ連続関数空間や,無限遠点で消滅する連続関数空間などをその具体例としてもつ,定数関数を含まない抽象関数空間に対しては,依然として未解決である.そこで,Stone束の場合の結果と,今回得られた定数関数を含まない具体的空間の場合の両者を包含する抽象関数空間を定式化し,その空間上で定義された共単調加法的汎関数のショケ積分表示定理の確立を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も,国内外で開催される研究集会に積極的に参加し,本研究課題に関連した研究発表,研究打ち合わせ,情報収集のための旅費として,その多くを使用する予定である. また,前年度未使用額が生じた状況は次の通りである: 研究計画では,本研究課題を主要テーマとする国際会議を,General Chairとして北京で主催するための旅費(主に外国の研究協力者分も含む)を見込んでいたが,中国側主催者から,研究協力者に対して予想以上の旅費の援助が得られたため,未使用額が生じてしまった.上記国際会議は,平成25年度には日本で開催予定のため,上記未使用分は,その準備のための費用として,平成24年度と25年度に分けて使用予定である.
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Research Products
(6 results)