2012 Fiscal Year Research-status Report
測度の弱収束を用いた非加法的測度の作る空間の位相構造の研究
Project/Area Number |
23540192
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
河邊 淳 信州大学, 工学部, 教授 (50186136)
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Keywords | 非加法的測度 / ショケ積分 / 菅野積分 / Levy収束 / 測度の弱収束 / Portmanteau定理 / Riesz型積分表示 / 漸近平行移動可能性 |
Research Abstract |
1.非加法的測度の弱収束とそれを定める非線形積分との依存性について:非加法的測度からなる空間上の測度の弱収束の概念は,非加法的測度の積算概念である非線形積分を用いて定義される.これら非線形積分として重要で広く利用されているのが,ショケ積分と菅野積分である.この研究では,まず,極限測度に測度の正則性に関する概念である完全co-連続性を仮定することにより,ショケ積分で定まる測度の弱収束に関するPortmanteau定理を,測度が定義されている基礎空間が距離空間の場合から,一般の完全正則空間の場合に拡張した.さらに,菅野積分で定まる測度の弱収束に関するPortmeanteu定理の定式化も同時に行い,こられ2つの非線形積分は,完全co-連続な非加法的測度からなる空間上に同じ測度の弱位相を定義することを示した. 2.非加法的測度の弱収束を定める距離の構成について:距離空間上の非加法的測度に対してLevy-Prokhorov型の距離とFortet-Mourier型の距離を導入し,その基本的性質を調べた.特に,これらの距離は,自己連続なRadon非加法的測度からなる空間上では,分離的性質を満たし,実際に距離となることを示した.また,同程度一様自己連続性の概念を新たに導入し,非加法的測度の弱収束は,この集合上では,一様的性質をもつことを示した.これらの結果から,非加法的測度の弱収束は,同程度一様自己連続な集合上でLevy-Prokhorov型距離とFortet-Mourier型距離により距離付け可能であることがわかった.また,測度の弱収束列の一様緊密性に関するLeCamの定理を,非加法的測度の場合へ拡張することに成功した.さらに,これらの結果を,自己連続あるいは一様自己連続な非加法的測度をもつ空間上の可測写像列の収束性と一様緊密性に関する命題の証明に応用した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画のうち,「測度の弱収束とLevy収束の定式化とPortmanteau型定理の定式化」については,論文「Metrizability of the Levy topology on the space of nonadditive measures on metric spaces」が国際専門誌Fuzzy Sets and Systemsに掲載された.また,非加法的測度の弱収束とそれを定める非線形積分の依存性に関する論文「Weak convergence of nonadditive measure defined by Choquet and Sugeno integrals」も掲載予定である. 「関数空間上の共単調加法的汎関数の積分表示」に関しては,必ずしも正錐とは限らない関数空間上の汎関数に対しても,新たに漸近平行移動可能性条件を導入することにより解決し,論文「The Choquet integral representability of comonotonically additive functionals in locally compact spaces」が国際専門誌International Journal of Approximate Reasoningに掲載された. 「Banach空間あるいはRiesz空間に値をとる非加法的測度の研究」については,Riesz空間値非加法的測度のショケ積分に対する有界収束定理の成立性と測度の自己連続性との関連を論じた論文「The bounded convergence theorem for Riesz space-valued Choquet integrals」が国際学会誌Bulletin of the Malaysian Mathematical Sciences Societyに掲載された.
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Strategy for Future Research Activity |
下記の課題について,申請時の研究計画・方法に基づき,研究を推進する. 1.抽象空間上で定義された非線形汎関数のショケ積分表示定理の定式化 局所コンパクト空間上のコンパクトな台をもつ連続関数空間や,無限遠点で消滅する連続関数空間などをその具体例としてもつ,定数関数を含まない抽象関数空間を定式化し,その空間上で定義された共単調加法的汎関数のショケ積分表示定理の定式化を目指す. 2.非加法的測度の弱収束とそれを定める非線形積分との依存性 本年度の研究で,ショケ積分と菅野積分は,完全co-連続な非加法的測度からなる空間上に同じ測度の弱位相を定義することを示したが,この結果を,Klement,Mesiar,Papが提唱する汎用的な非線形積分の概念であるuniversal integralの場合に拡張することを試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も,国内外で開催される研究集会に積極的に参加し,本研究課題に関連した研究発表,研究打ち合わせ,情報収集のための旅費として,その多くを使用する予定である.また,次年度に国際会議を国内で主催予定のため,その準備の費用としても使用する予定である. 本年度未使用額が生じた状況は次の通りである. 1)当初計画では,研究成果発表のための海外出張を本年度実施予定であったが,大学の公務と重なったため,次年度実施することとなり,次年度使用額が生じた. 2)次年度に本研究課題に関連する国際会議を国内で主催予定のため,その費用として次年度に繰り越した.
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Research Products
(9 results)