2013 Fiscal Year Research-status Report
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23540193
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
高木 啓行 信州大学, 理学部, 教授 (20206725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽鳥 理 新潟大学, 自然科学系, 教授 (70156363)
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Keywords | バナッハ環 / 保存問題 / 合成作用素 |
Research Abstract |
この研究課題は、バナッハ環における保存問題を意識しつつ、等距離写像(距離を保つ写像のこと。線形でなくともよく、線形なものは等長作用素という)の研究を行うもので、バナッハ環やバナッハ空間(特に、関数空間・数列空間)の間の等距離写像を特徴づけるスキームの構築を目指している。一般に、バナッハ空間は、あるコンパクトHausdorff空間上の連続関数の空間に同型に埋め込まれるから、連続関数からなるバナッハ空間の上の等距離写像を特徴づけることが第一の作業と考えられる。そこで、AとBを、局所コンパクトHausdorff空間上の連続関数からなる複素線形空間(上限ノルムをもつ)とし、次の主張が成り立つかどうかを調べる。 「主張:AからBへの全射の等距離写像は、BのChoquet境界において、複素共役を含む荷重合成作用素で表現される。」 平成23年度(初年度)以来、AとBに強い分離条件を課すなど、いろいろな条件のもとに上記の主張を証明してきたが、平成25年度には、「端点」という観点にもとづいた、より一般的な仮定をおき、上記の主張を証明することができた。また、荷重合成作用素の定義域についても、Choquet境界を越えて拡張できるかどうかを調べ、既存の結果との関連を調べた。実際、今回の結果は、Banach-Stoneの定理を端緒に研究されてきた、連続関数空間における等長作用素についての多くの結果(たとえば、W. Novinger / K. deLeeuw, W. Rudin and J. Wermer / A. Ellis / J. Araujo and J. Fontらの研究)を内包するものになった。一方で、上記の主張が成り立たないケースが起こりうることもわかった。こうして、上記の主張に関して、かなり踏み込んだ結果が得られ、ひとつのまとまった論文として発表できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『研究実績の概要』欄で述べたように、今回発表した内容は、ある程度の完成度をもっている。特に、主張を示すために与えた仮定が、当初目指した「端点を用いる方法」を究極的に突き詰めた形になったので、計画に見合った結果が得られたといえる。 一方で、件の主張が成り立たないケースについては、当初に予想できなかったことだが、その実例が見つかったことで、われわれの与えた仮定が、ある意味で鋭い精度をもっていることがわかった。さらに、この主張が成り立たないケースが、1次元空間のような薄っぺらい関数空間において生じることがわかっていて、その関数空間が関数解析学の立場から重要性を見出しにくいことから、今回得られた結果で十分に期待に応えられているといえる。 以上のような理由で、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
例外的な連続関数空間の間では、等距離写像が複素共役を含む荷重合成作用素で表せない(『研究実績の概要』欄の主張が成り立たない)。『現在までの達成度』欄で述べたように、ここに現れる関数空間は関数解析学の立場で重要でないかもしれない。しかし、予想に反して、どうしてこのような現象が起きるのか、原因の理解を深める必要があるうえ、数学的には、連続関数空間全部に通用する定理が望まれる。平成26年度には、この辺の現象を詳しく調べて、ある程度の予想を立てたい。 一方で、今回の結果は、多くの具体的な関数空間や数列空間に応用できるスキームになるよう、検証をすすめたい。そのための準備として、これまでに、数列空間の直積空間の上の等長作用素(シフト作用素を含む)や、連続関数空間での荷重合成作用素のHyers-Ulam安定性、それから、ルベーグ空間・ハーディ空間上の作用素(特に、スラントテープリッツ作用素)の研究をすすめてきた。これらについても、この研究課題の副産物として、まとめる段階に入りたいと思っている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者の羽鳥理教授が、この研究課題に関連した研究発表のために、平成26年度に米国で開催される関数空間カンファレンスに参加することにしたため、その費用として、平成25年度の分担金を繰り越した。 前年度未使用額と平成26年度経費を合わせた研究費は、研究分担者や連携研究者をはじめ、多くの関係者との情報交換や研究打ち合わせに使用する。また、最新情報を得るための関数解析学・実解析学関連図書の購入に用いる。
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Research Products
(4 results)