2011 Fiscal Year Research-status Report
流体力学の基礎方程式の解の一意性と正則性についての研究
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23540194
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
谷内 靖 信州大学, 理学部, 教授 (80332675)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 関数方程式 / 流体力学 |
Research Abstract |
水や油などの非圧縮性粘性流体の運動を記述するNavier-Stokes方程式の解の性質に関し、調和解析学や関数解析学的手法を用いて研究した。この方程式は非圧縮性粘性流体の速度場uと圧力場pを未知関数とする連立の非線形偏微分方程式である。 平成23年度においては、時間周期解や時間概周期解の一意性定理の改良の研究を中心に行った。これらの解は定常解(時間によらない解)を含む物であり、より一般的で自然な解である。私は、既に時間概周期解の一意性に関して次の結果を示している。与えられた外力に対し、二つの解u,vが適当な関数空間上に存在したとし、どちらか一方が、ある意味で小さいとき、2つの解uとvは一致することを示している。この結果は、時間概周期解に摂動を加えた解には適用できないため、あまり満足のいく結果ではなかった。平成23年度において、我々はこの一意性定理を改良し、同様の一意性を、時間概周期解の一般化であるbackward asymptotically almost periodicな解に対しても証明した。この新しい一意性定理は、時間概周期解に適当な意味で摂動を加えた解にも適用できるものであり、以前の結果の大幅な改良になっている。また同時に、そのような解(backward asymptotically almost periodicな解)の存在定理も証明した。 また、この結果をフランスのマルセイユで行われた研究集会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではNavier-Stokes方程式の時間概周期解の一意性の研究およびLeray-Hopf解(エネルギー有界な弱解)の正則生の研究であった。そのうち、時間概周期解の一意性定理の改良に成功した。その結果を発表できた事をふまえ、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Navier-Stokes方程式で得られた一意性の結果の更なる改良を試みるとともに、熱対流の運動を記述するBoussinesq方程式に対しても同様の一意可解性の証明を行う。この方程式はNavier-Stokes方程式を一般化したものである。また、Navier-Stokes方程式の弱解の正則性の研究を行う。特に、非常に一般的な領域での同方程式の弱解の研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
この研究を行う上で、Navier-Stokes方程式の解の一意性と正則性に関して、独自の研究手法により優れた結果を導いている三浦英之助教(大阪大学)との意見交換が不可欠であり、そのため大阪大学へ4回出張する。また、非常に一般的な領域でのNavier-Stokes方程式について、重要な結果を証明されている小薗英雄教授(早稲田大学)との意見交換が必要であり、そのため早稲田大学へ4回出張する。また、これらの研究のために調和解析学や流体方程式関係の図書が多く必要であり、それらを購入する。さらに、研究結果を内外の研究集会で発表する。 なお、平成23年度は交付金額の決定が遅れたため、出張回数を控え、20万円ほど次年度使用額が生じた。未使用分は平成24年度に使用する。
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