2012 Fiscal Year Research-status Report
流体力学の基礎方程式の解の一意性と正則性についての研究
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23540194
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
谷内 靖 信州大学, 理学部, 教授 (80332675)
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Keywords | 関数方程式 / 流体力学 |
Research Abstract |
水や油などの非圧縮性粘性流体の運動を記述するNavier-Stokes方程式の解の性質に関し、関数解析手法を用いて研究した。この方程式は非圧縮性粘性流体の速度場uと圧力場pを未知関数とする連立の非線型偏微分方程式である。私は、時間周期解や時間概周期解のように時間軸全体で定義された解の一意性を研究し、次のような結果を示した。外部領域のような非有界領域上の問題に関して、与えられた外力に対し二つの時間概周期的な解が適当な関数空間上に存在したと仮定し、その一方がある意味で小さければ、それら二つの解は一致することを証明した。さらに、平成23年度には、時間概周期解にある意味で摂動を与えた解(Backward asymptotically almost periodicな解)の一意性に関しても同様の結果を証明したが、平成24年度においては、これをさらに改良することに成功した。以前の結果では、二つの解に余分な正則性が仮定されていた。すなわち、二つの解がローレンツ空間L(6,2)と弱L3空間の両方に属することが仮定されていた。我々は、この付加条件を緩め、二つの解が、ローレンツ空間L(6,2)と弱L3空間の共通部分の弱L3空間での閉包に入るという条件に緩めることに成功した。 また、Backward asymptotically almost periodicな解の一意性に関する結果を国内の研究集会等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は、Navier-Stokes方程式の解でエネルギー有限でない解の正則性を研究することにより、時間概周期解の一意性に課せられた余分な正則性条件を取り除くことであった。そのうち、エネルギー有限でない解の正則性の問題に関しては満足のいく結果は得られていないが、時間概周期解の一意性に課せられた余分な正則性の条件は、別の方法により、取り除くことに成功した。このことをふまえ、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
Navier-Stokes方程式の解の一意性に関して、時間概周期的な解の一意性に関しては結果得ているが、今後は時間概周期性を全く仮定しない場合の一意性を研究する。また、熱対流の運動を記述するBoussinesq方程式に対しても同様の一意可解性の証明を行う。この方程式はNavier-Stokes方程式を一般化したものである。また、Navier-Stokes方程式の 弱解の正則性の研究も行う。特に、非常に一般的な領域での同方程式の弱解の研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
この研究を行う上で、非常に一般的な領域でのNavier-Stokes方程式について、重要な結果を証明されている小薗英雄教授(早稲田大学)との意見交換が必要であり、そのため早稲田大学へ4回出張す る。また、Navier-Stokes方程式の解の一意性と正則性に関して、独自の研究手法により優れた結果を導いている三浦英之助教(大阪大学)との意見交換が不可欠であり、そのため大阪大学へ4回出張する。また、これらの研究のために調和解析学や流体方程式関係の図書が多く必要であり、それらを購入する。さらに、研究結果を内外の研究集会で発表する。 平成24年度にノートパソコンを購入したが予想より1万円ほど安く購入できたため、次年度使用額が生じた。未使用分は平成25年度に使用する
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