2014 Fiscal Year Research-status Report
流体力学の基礎方程式の解の一意性と正則性についての研究
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23540194
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
谷内 靖 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (80332675)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 関数方程式 / 流体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
水や油などの粘性のある縮まない流体(非圧縮性粘性流体)の運動を記述する非圧縮性Navier-Stokes方程式の解の性質に関して、関数解析学的手法により研究した。非圧縮性Naver-Stokes方程式は非圧縮性粘性流体の速度場u=u(x,t)と圧力場p=p(x,t)を未知関数とする連立の非線形偏微分方程式である。以前、私は、この方程式の時間周期解に関して、時間周期解の一意性に関して、次のような結果を証明している。与えられたデータに関して、二つの時間周期解uとvが適当な関数空間上に存在したと仮定し、その一方の解がある意味で小さければ、それら二つの解uとvが一致する。これに関連して、平成23年度は、時間周期解を一般化したBackward asymptotically almost periodic解に関しても同様の結果を証明し、平成24年度には、一意性のために仮定されていた「余分な正則性」の仮定を緩めることに成功した。平成25年度には、一意性のための時間周期性や概周期性の仮定を大幅に緩め、二つの解u(t)とv(t)の一方が小さく、u(t)とv(t)が適当な関数空間に属し、u(t)とv(t)が弱L3空間においてprecompactな値域を持てば二つの解が一致することを示した。 平成26年度においては、二つの解に両方に仮定されている一意性のためのprecompactな値域を持つという仮定(precompact値域条件)を、小さい方の解には仮定しなくても良いことを証明した。すなわち、二つの解u(t)とv(t)が存在するとし、u(t)とv(t)が適当な関数空間に属し、u(t)が小さく、v(t)が弱L3空間においてprecompactな値域を持てば、両方の解は一致するすることを示した。 またこの結果を、フランスやスペインの研究集会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、非圧縮性Navier-Stokes方程式の解の一意性に関して、Navier-Stokes方程式の解でエネルギー有限でない解の正則性を研究すること、すでに証明済のprecompact値域条件のもとでの時間大域解の一意性の結果を改良すること、熱対流方程式に応用することをであった。 このうち、時間大域解の一意性の結果に関しては大幅に改良できた。すなわち、二つの解のうち、小ささを仮定した方にはprecompact値域条件を課さなくても良いことを証明した。詳しく述べると、二つの解u(t)とv(t)が適当な関数空間に存在するとし、u(t)が小さく、v(t)が弱L3空間においてprecompactな値域を持てば二つの解が一致することを示した。このことをふまえ、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
非圧縮性Navier-Stokes方程式の時間周期解のように時間大域的な解の一意性に関して、26年度においては、二つの解の内、小さい方の解に対してはprecompact値域条件を取り除くことに成功したが、平成27年度においては、もう一方の解に課せられているprecompact値域条件を取り除くことを試みる。また、precompact値域条件を満たす解の存在定理に関しても研究する。既に、外力が小さく、さらに時間概周期的であれば、そのような解が存在することは知られている。私は、外力が概時間周期的でというか仮定をゆるめ、外力がprecompactな値域を持つという条件のもとでの、そのような解の存在定理の証明を試みる。特に外部領域などの非有界領域でこの問題を考える。 また、熱対流方程式に関しても同様の結果を証明する。また、非常に一般的な領域における非圧縮性Navier-Stokes方程式の弱解の正則性の研究も行う。
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