2011 Fiscal Year Research-status Report
局所平滑化評価式の非線型双曲型波動方程式への応用に関する研究
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23540198
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
肥田野 久二男 三重大学, 教育学部, 准教授 (00285090)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 波動方程式 / 局所平滑化効果 / ストリッカーツ型評価式 |
Research Abstract |
論文``On almost global existence and local well-posedness for some 3-D quasi-linear wave equations'' (Kunio Hidano, Chengbo Wang and Kazuyoshi Yokoyama. Advances in Differential Equations, Vol.17, No.3-4 (2012), 267--306)で得られていた,変数係数をもつ波動方程式の解が満たす時空L2評価式を用いて,なめらかさの低い初期値をもつ準線形波動方程式の初期値問題の時間局所適切性に関して,解の初期値への連続依存性に重きを置いて考察しました.準線形波動方程式の解を逐次近似法で構成する際,その過程で「微分の損失」が発生します.これが原因となり,解の初期値への連続依存性は弱い結論しか従いません.この状況を克服する重要な方法がH. Beirao da Veigaによって提唱され,十分になめらかな初期値をもつときの準線形波動方程式を解析する場合には,解の初期値への連続依存性の結果を改良できることが知られていました.そこでBeirao da Veigaの方法がなめらかさの低い初期値をもつときの問題にも有効かを調べることにしました.そしてA_pクラスの重みのついたソボレフ空間における,コンパクト台を持つなめらかな関数の稠密性が要諦であることが判明しました.幸いにもこのことは実解析の手法を用いて肯定的に示されることが分かっていますから,初期値のなめらかさが低い問題の場合においても,解の初期値への連続依存性が満足のいく形で得られました.Beirao da Veigaの有名な方法が,初期値のなめらかさが低いときの問題にも適用されたことは意義深く重要であると思います.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
改良された時空L2評価式を用いて,なめらかさの低い初期値をもつ準線形波動方程式の初期値問題の時間局所的適切性と時間大域的適切性を調べることを研究課題としています.解の初期値への連続依存性で満足のいく結果を得ることができましたので,まずは時間局所的適切性の研究に関して当初の目論見どおりに順調に研究が進展しているといえます.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はなめらかさの低い初期値をもつ準線形波動方程式の初期値問題の時間大域解の一意存在定理の確立を目指します.そのために旅費を使い,本研究の協力者と議論を重ねて研究結果を深めていく所存です.また,物品費で実解析学等に関する専門書を購入し,研究に活用できそうな専門的知識を吸収していく所存です.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず「収支状況報告書」の「次年度使用額」の合計欄にある1,515円が生じた状況に関して述べますと,これは平成23年度の研究費が概ね順調に研究の進展に資するために使用されたことを意味していると思います.この1,515円と平成24年度に申請する研究費を合わせた額の研究費をさらなる研究の進展のために使用していく所存です.具体的には,本研究課題の協力者と議論を重ねたり,得られた成果を発表したり,また最近の研究の動向に関する情報を収集したりするために、旅費55万円を使います.函数方程式論や実解析論に関する専門書を購入するために物品費15万円を使用します.
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