2011 Fiscal Year Research-status Report
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23540200
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
藤井 淳一 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (60135770)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 デンマーク / 国際情報交流 クロアチア |
Research Abstract |
昨年度、前科研費「作用素不等式の開発とその応用」(基盤研究(C)、課題番号20540166)にて、多様体としての正作用素全体に関するCorach-Porta-Rechtの幾何学的考察を研究し続けてきたが、正定値行列に限られるものの、Hiai-Petzによる新たな研究に刺激され、いくつかの論文を発表することができた。今年度、さらにその発展として Linear Algebra and Its Application 誌に「Path of quasi-means as a geodesic」という1篇の論文を発表でき、この方向は一程度達成できたものと思われる。今後もさらに異なった視点からの発展が望まれる。 さらに整数平均の多変数化については、微妙な変化をとらえるのが難しかったが、3変数平均の結果を日本数学会の秋の学会で発表し、論文としても Sciantiae Mathematicae Japonicae 誌に掲載が決まっている。今後、さらに深い整数論的視点の発展が望まれている。 また共同研究として、雑多な作用素不等式を(海外研究者を含めた)共同で2篇、単独で1篇(Jensen作用素不等式の外分点的考察)の論文として発表することができた。また以前の研究の副産物として、無限有向グラフの隣接作用素として作用素論的に、特にスペクトルとエントロピーについて考察したものに若干の考察を加え、Birkhauser/Springer から出版された、M.Dehmer 編集の書籍「Structural analysis of complex networks」の中に、「Spectrum and entropy for infinite directed graphs」を分担執筆し発表することができた。これは作用素論の入門としても価値を見出せるものではないかと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、多様体論的な考察としては、かなり良い成果が得られたのではないかと考えられる。一方、整数平均の方は、結果は得られたもののまだまだ満足のいくものではなく、表現が複雑すぎるために、一般の多変数化に移れる状況にまだなっていない。更なる基礎固めや考察が必要と思われる。作用素不等式については、特にJensen型の作用素不等式について、通常内分点的な表現にとどまっているものを、外分点的に見直すことができたのは評価できる。その他、作用素不等式についての共同研究も順調に進んでおり、大まかには満足のいくものとして評価できるのではないかと思われる。特に、副産物として無限有向グラフのエントロピー論を本の分担執筆で発表できたのは、成果として評価できるだろう。ただ、研究交流としては、機会が少なくあまり満足のいくものではなかったので、来年度は積極的に知識・情報を求めていきたい。この点は、少し評価が低いと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
Corach-Porta-Rechtの幾何学的考察に関連して、以前に導入した作用素平均の補間的パス(幾何学的に測地線に関連している)について、改めてその性質が見直されており、3月の日本数学会の春季年会でその一端を発表したが、その中で、補間的パスを積分してできる作用素平均が重要ではないかと気づき始めた。補間的パスは、微分可能であり、パラメータについて凸であるなど、様々ないい性質を持つことがわかっているが、それらを使った結果は今まで気づかれていなかった。作用素対数平均は、作用素幾何平均の補間的パスを積分して得られる典型的で重要な平均であるが、そのような平均を「積分平均」ととらえることにより、新たな評価式として、作用素不等式が得られることがわかってきた。今年度はまずこの方向から研究をはじめたいと思う。 さらに、Jensenの外分点的考察を利用して得られる作用素不等式が多く得られる可能性があるので、今年度はこの方面も追及していきたい。 もちろん、様々な境界領域と作用素不等式のかかわりについては、今後も地道に研究を続けていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は研究交流があまり活発に行えなかったので、今年度はその点をまず改善していきたい。すでに、本学主催の研究会が秋に行われることが予定されており、講演発表はもちろん、会場費・論文集作成などに積極的に出資していくつもりである(20万弱)。外部の研究会に参加するための費用も、15万程度必要かと思われる。また今年度は、資料の収集および整理のためにドキュメントスキャナーを導入して、膨大な量となって検索がかなり困難な紙媒体の論文等のデータをPDF化し、検索閲覧が容易にできるようにしていきたい(予定額8万程度)。境界分野の研究が必要とされることが多いので、良質の資料の完備は研究上の死活問題にもなっているが、現状では一部PDFデータベースができているものの、まだまだ紙媒体でしかないものも多く、研究上非効率的な状況である。PDFデータベース化によって、研究効率が飛躍的に改善されると思われる。その他、境界領域にある様々な基礎資料がまだ必要なので、約20万程度の予算でそれらも収集していきたい。以上で、大雑把な見積もりではあるが、物品費45万程度(研究会開催費用20万弱を含む)、旅費20万程度、謝金その他で15万程度の分担としたいと考えている。
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Research Products
(9 results)