2013 Fiscal Year Research-status Report
電磁場内での多体量子力学系に対するスペクトル・散乱理論
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23540201
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
足立 匡義 神戸大学, 理学研究科, 教授 (30281158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 泰則 東北大学, 理学研究科, 准教授 (70507954)
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Keywords | 多体問題 / スペクトル理論 / 散乱理論 / 波動作用素 / 漸近完全性 / 電磁場 |
Research Abstract |
『時間周期的に変動する、空間的に一様な磁場内での量子散乱の順問題』 研究代表者である足立は、その学生である川本昌紀氏と共同で、時間周期的にオン・オフを繰り返すような一様磁場内での量子散乱順問題に取り組み、磁場のオン・オフの時間と、オンのときの磁場から定まる荷電粒子のサイクロトロン振動数とで定められる、ある2次正方行列の固有方程式の判別式の符号から、散乱の可能性の有無を判定し得ることを明らかにした。散乱が起こり得る場合の、この系に対する波動作用素の存在と漸近完全性の問題については現在研究中である。 また、この問題に関連して、系を支配するハミルトニアンが、1次元量子調和振動子のハミルトニアンと、1次元自由シュレーディンガー作用素との間の、時間周期的な交代によって与えられるとき、やはりある2次正方行列の固有方程式の判別式の符号から、増幅現象の有無を判定し得ることを明らかにした。こちらは足立と、その学生である岡田遼氏との共同研究による。 どちらの問題においても、判別式が正である場合の系の挙動が興味深く、前者の問題では対数螺旋のような自由軌道が、後者の問題では指数関数的増幅が現れる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
空間的に一様な磁場内での、磁場に直交する平面内での荷電粒子の挙動が、その磁場のオン・オフという、極めて単純な時間周期的変動によっても、ある指標を境に大きく変動することを見出したことは、研究計画を立てる段階では思いもよらなかった大きな成果に値すると思っているが、平成25年度中に論文としてまとめ上げられなかった点が割り引かれる。
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Strategy for Future Research Activity |
『時間周期的な変動を持つ一様磁場内での量子散乱』 研究実績の概要のところでも述べたが、パルス状の一様磁場内での量子力学系に対する散乱問題について、一体中心力の場合には、波動作用素の漸近完全性の問題を解決したいと考えている。次に、サイクロトロン振動数の異なる二粒子からなる系を考え、磁場の、時間周期的なオン・オフによってそれらの分離が可能となるかどうかを調べたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、平成25年度中にメキシコ国立自治大学のRicardo Weder教授を2週間程度招聘する予定であったため、それに必要な分を使用せずにいたが、その招聘は諸事情により実現しなかったからである。 成果発表や研究打ち合わせのための国内旅費として用いるのを主な目的とする。その他には、古くなったパソコンの買い替えのために物品費として用いる。
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Research Products
(1 results)