2012 Fiscal Year Research-status Report
行列係数シュレディンガー作用素のスペクトル解析とその応用
Project/Area Number |
23540204
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
廣川 真男 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (70282788)
|
Keywords | ラビ模型 / エネルギー準位交差 / 2準位原子 / 1モード・レーザー光 / 超対称量子力学 / 自発的超対称性の破れ / カイラル性 |
Research Abstract |
平成24年度は研究課題で対象とする「行列係数を持つシュレディンガー作用素のハミルトニアンに対するスペクトル解析」を行った。特に、2準位原子と1モード・レーザー光の相互作用を記述するラビ模型のハミルトニアンに対して、基底エネルギーと第一励起エネルギーの間には、エネルギー準位交差が起こらない事が証明された。この模型において、原子の2準位間遷移振動数と1モード・レーザー光の振動数が一致するとき、結合定数が無い場合、ラビ模型のハミルトニアンは、所謂、ウィッテン・ラプラシアンとなり超対称量子力学の模型となる。逆に、結合定数が無限大という漸近的状況では、その超対称性に対し、自発的対称性の破れが起こることを証明した。また、この自発的超対称性の破れを担うのがラビ模型の持つカイラル性であることも分かった。従って、ラビ模型において、結合定数が増大することは、超対称量子力学から自発的超対称性の破れへと転移させる過程となり、基底エネルギーと第一励起エネルギーとの間にエネルギー準位交差が無いことは、その過程の途中では自発的超対称性の破れが起こらず、超対称性の崩れ方を記述する過程と成っていることが分った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『研究実績の概要』でも書いたように、当初目的としていた、結合定数を大きくして行ったときの、ラビ模型のハミルトニアンのスペクトルにみられるエネルギー準位交差の存在・非存在の問題に関して、基底エネルギーと第1励起エネルギーの間では非存在となることが証明された。一方で、このスペクトルの数値計算を進めることで、1)2原子間遷移振動数と1モード・レーザー光の振動数を一致させた場合に、第2n励起エネルギーと第2n+1励起エネルギー(n=1、2、・・・)との間にエネルギー準位交差もしくは擬交差の兆候に法則性が見出され、また、2)結合定数をゼロとしたときに、超対称量子力学の特徴を示すエネルギー準位の配列、結合定数を無限大に向け大きくして行ったときに、漸近的に、自発的超対称性の破れを暗示するエネルギー準位の配列;が見られた。2)に関しては、その数学としての証明を与えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
『研究実績の概要』でも書いたように、ラビ模型で結合定数を大きくする過程を、超対称量子力学を自発的超対称性の破れへと持って行く過程とみなしたとき、その自発的超対称性の破れを担うラビ模型のカイラル性が数学的にどのような役割をしているのかを解明する。これをカイラル性に係る量子相転移の視点で考え、本研究課題の目的であるラビ模型のハミルトニアン等の行列係数を持つシュレディンガー作用素のスペクトル解析を、エネルギー準位交差を中心に調べる。 『現在までの達成度』の理由で述べた、数値計算から推測される、「1)2原子間遷移振動数と1モード・レーザー光の振動数を一致させた場合に、第2n励起エネルギーと第2n+1励起エネルギー(n=1、2、・・・)との間にエネルギー準位交差もしくは擬交差の兆候に法則性が見出される」ことに対して、これも上述の量子相転移の視点から調べて行く。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
量子相転移とエネルギー準位交差に係る文献や書籍を購入するためにあてる。
|