2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540206
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松本 敏隆 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20229561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 良和 中央大学, 理工学部, 教授 (80092691)
渡邉 紘 サレジオ工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (30609912)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 放物型方程式 / 適切性 / 非線形境界条件 / リプシッツ作用素半群 |
Research Abstract |
(1)増大度αの解析的半群の非線形摂動2次元有界領域におけるno-flux境界条件(非線形境界条件)付きのdrift-diffusion方程式を考察し、これを基礎空間と跡空間との積空間における増大度αの解析的半群の非線形摂動と捉え、抽象半線型発展方程式の初期値問題に書き直した。かなり一般的な安定性条件と増大条件の下で、この抽象初期値問題に対する適切性を証明した。この結果の応用として前述のdrift-diffusion方程式の適切性並びに正則性を示した。特に時間変数についての正則性は、従来の研究では得られていないものである。(2)強退化放物型方程式に対する初期値問題の研究分担者の渡邉は、不連続な係数を持つ強退化放物型方程式に対する1次元初期値問題の弱解の存在を証明した。従来の証明で用いられているcompensated compactness methodは強力である反面、3次元以上の問題に適用するのは難しいという欠点もあった。本研究では、H-測度を用いることにより、既存の結果よりも弱い仮定の下で弱解の存在を証明し、3次元以上の問題への適用可能性を示唆した。さらに、双曲型保存則方程式と多孔性媒質方程式の一次結合で表される強退化放物型方程式に対する1次元zero-flux境界値問題も考察し、特に非線形移流項が空間変数に関して不連続な場合に弱解の存在を証明した。この場合、近似解の変動量が一様に有界にならないため、従来の証明法は適用できないが、H-測度を用いたコンパクト性定理を近似解の有界列に適用することで解決した。(3)リプシッツ発展作用素の生成理論の研究分担者の小林は、時間非斉次な抽象初期値問題の解作用素であるリプシッツ発展作用素の生成理論の研究を開始した。時間依存項をもつ偏微分方程式の適切性の証明において重要な手段を与えるもので、研究の進展に繋がることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)本年度の実施計画に挙げた増大度αの解析的半群の非線形摂動については、実施計画に沿った形で研究が進展し、かなり一般的な条件の下で適切性の結果が得られた。さらにその結果の応用としてno-flux境界条件付きのdrift-diffusion方程式の適切性を示した。特に解の時間正則性については、従来知られていない新しい結果が得られており、目的の達成度はかなり満足できるものと考えている。(2)強退化放物型方程式に対する初期値問題の弱解の存在については、従来の方法では扱えなった問題を解決し、また、1次元zero-flux境界条件(非線形境界条件)付き強退化放物型方程式に対する弱解の存在についても示しており、かなり良好な結果が得られたと考えている。残っている弱解の一意性の問題については、引き続き研究を続ける予定である。(3)リプシッツ発展作用素の生成理論は、時間依存する項を含む偏微分方程式の適切性の研究を進めるうえで重要なツールとなるものである。この理論の進展とその半線型放物型版の開発は、当初の計画を越えた結果を得ることに繋がることが期待される。以上のことから、現在までの研究の達成度はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在順調に研究計画が進んでいるため、今後も研究分担者、連携研究者と緊密に協力して研究を進めてゆく。研究計画通り、これまでの研究成果を踏まえて非線形性が強くない境界条件を持つ半線型放物型方程式、並びに退化放物型方程式の適切性の研究を行う。また、境界での摩擦などを考慮した非線形境界条件を持つ非圧縮流体の方程式へ応用することを目指して、リプシッツ作用素半群の生成定理の研究を進めていく。その後、境界条件の非線形性が強いため、半線型型方程式として扱えないような方程式にも応用できるよう、完全非線形版のリプシッツ作用素半群の生成理論を拡張し、さらに数値計算を行う上でも重要な半群の積公式の導出についての研究へと繋げていく計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者と研究分担者の都合が合わなかったため、互いの所属機関を訪問して研究打ち合わせを行うことが出来なかったこと、および分担者の残金が旅費に使用するには不十分だったため未使用金が生じた。同じ研究集会に参加した際に研究打ち合わせを行ったため、研究遂行上の支障は特に生じていない。次年度は当初計画通りに、所属機関を訪問して研究分担者との研究打ち合わせ、および研究課題に関連する研究集会等へ参加して最新の研究に関する情報収集や成果発表を行う。成果発表のプレゼンテーション用に、携帯用のノートパソコンを購入する予定である。また、他大学から関連する分野の専門家を招いて、セミナー等で専門的知識の提供を受けることも計画している。
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Research Products
(9 results)