2012 Fiscal Year Research-status Report
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23540206
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松本 敏隆 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20229561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 良和 中央大学, 理工学部, 教授 (80092691)
渡邉 紘 サレジオ工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (30609912)
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Keywords | 放物型方程式 / 適切性 / リプシッツ作用素半群 |
Research Abstract |
(1)非線形境界条件付き半線型方程式への半群論的アプローチ 前年度行った基礎空間と跡空間との積空間を用いた方法を他の半線型問題に拡張するための研究を連携研究者と共に行った。非線形半群論的な方法の中にストリッカーツ評価を用いる手法を取り入れるべく、研究を進めている。シュレディンガー方程式や波動方程式の初期値・境界値問題へも応用できるものと期待している。 (2)結晶粒界モデル方程式に対する初期値問題の研究 分担者の渡邉は、結晶粒界現象を記述する数学モデルである小林-ワレン-カーターモデルを考察し、解の存在を証明した。このモデルは、未知関数を含む重み付き全変動汎関数を含むような自由エネルギーの勾配流として記述される二つの放物型方程式の連立形である。その数学的扱いは非常に難しく、通常はこのモデルに対する緩和モデルが考察されるが、渡邉は緩和項を含まないオリジナルのモデルに対する1次元問題を考察し、有界変動関数や測度論の一般論を用いて近似解の収束極限が弱解になっていることを証明した。また、自由エネルギーの定義域の閉包から初期関数を取った場合も考察し、ヒルベルト空間上の適性下半連続凸関数に関するモスコ収束性を本質的に用いて弱解の存在およびその解がエネルギー消散性を持つことを示した。 (3)リプシッツ作用素半群の近似理論およびリプシッツ発展作用素の生成理論の研究 分担者の小林は、リプシッツ作用素半群の近似理論の研究を行った。これは、抽象コーシー問題に密接に関連するものであると共に、数値計算の信頼性にも関連するもので応用上も重要なものである。得られた結果を射影法を用いた2次元ナヴィエ-ストークス方程式の解法に応用した。また、非線形作用素Aが連続な場合に、Aがリプシッツ発展作用素の生成作用素となるための必要十分条件を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の実施計画に挙げた非線形性が強くない境界条件を持つ具体的な半線形方程式の適切性については、放物型方程式以外への適用も視野に入れた形で研究を進めており、応用面でも新しい結果が得られるものと考えている。また、放物型方程式系である小林-ワレン-カーターモデルに対する初期値問題について、1次元の場合でも数学的に扱いが難しく従来の方法では扱えなった弱解の存在に関する問題を解決し、初期値のクラスの拡張ならびにエネルギー消散性を持つことも示しており、かなり良好な結果が得られていると考えている。また、退化放物型方程式の場合についても引き続き研究を続けている。 非圧縮粘性流体の研究に関しては、リプシッツ作用素半群の近似理論を展開して、得られた結果を2次元ナヴィエ-ストークス方程式の解法に応用したことは、流体方程式への応用においてリプシッツ作用素半群が有用なツールの一つに成り得ることを示しているだけでなく、数値計算の観点からも重要な結果であると考えている。また、リプシッツ発展作用素の生成理論は、時間依存項を含む偏微分方程式の適切性の研究を進めるうえで重要なツールとなり得るものである。今回の生成定理の応用として、時間に依存する準線形波動方程式の適切性を示しており、この生成理論の進展は研究計画の進めてゆく上で重要なものであると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在順調に研究計画が進んでいるため、今後も研究分担者、連携研究者と緊密に協力して研究を進めてゆく。研究計画通り、これまでの研究成果を踏まえて積空間を用いたアプローチを改良しつつ、非線形性境界条件を持つ放物型方程式、並びに退化放物型方程式の適切性を示すツールとなるリプシッツ作用素半群の生成理論の研究と具体的な偏微分方程式への応用を行う。さらに、前年度に得られた近似理論の成果を踏まえて非圧縮流体の方程式へのさらなる応用を目指して近似理論を拡張することも計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残金が旅費に使用するには不十分だったため未使用金が生じた。金額が少額であるため、当初の計画を変更することなく、研究分担者や連携研究者との研究打ち合わせ、および研究集会等へ参加して最新の研究に関する情報収集や成果発表を行う。また、他大学から関連する分野の専門家を招いてセミナー等で専門的知識の提供を受けることを計画している。
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Research Products
(17 results)