2011 Fiscal Year Research-status Report
周期的およびランダムな磁場を持つシュレーディンガー作用素のスペクトルの解析
Project/Area Number |
23540212
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
野村 祐司 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (40282818)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | シュレーディンガー作用素 / Aharonov-Bohm磁場 / 上半平面 / 離散群 / ランダウ準位 |
Research Abstract |
上半平面上の離散群の作用に関して不変な一様磁場とAharonov-Bohm磁場を持つシュレーディンガー作用素のスペクトルの解析に関して、結果をまとめ、論文を投稿中である。具体的な成果は以下である。一様磁場のみの場合には、磁場の強さがある閾値を超えれば、ランダウ準位と呼ばれる多重度無限大の固有値が現れることが知られているが、これに離散群の作用に関して不変なAharonov-Bohm磁場による摂動を加えたとき、ランダウ準位がどのように影響を受けるかを解析した。離散群として、第一種フックス群を考察した。離散群がある条件を満たせば、以下が成立することを示した。すなわち、ランダウ準位の存在するための十分条件を、離散群の基本領域を貫く磁束の量をもとに記述し、特に最小ランダウ準位については、その存在のための必要十分条件を与えることができた。この事実が示せた具体的な第一種フックス群としては、上半平面を離散群で割ってコンパクト化してできるコンパクトリーマン面の種数が0の場合がある。この時には離散群の作用に関して不変な任意の格子上にAharonov-Bohm磁場を立てても、上記の定理が成立する。その格子上に同じ位数の零点を持つ保型形式と、上半平面上に零点を持たないカスプ形式が、証明のための主要な道具はである。コンパクトリーマン面の種数が1の場合として、具体的にレベル11の合同部分群の場合を考察した。以上は、格子上にディリクレ境界条件を課したものについてであるが、ノイマン境界条件の場合についても考察した。この場合にはディリクレ境界条件の場合よりもランダウ準位は残りやすいことが示せる。また、対応するパウリ作用素のゼロモードについても考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上半平面上の離散群の作用に関して不変な一様磁場とAharonov-Bohm磁場を持つシュレーディンガー作用素のスペクトルの解析に関して、限られた離散群についてではあるが、ランダウ準位の存在条件を得ることができているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の上半平面上の離散群の作用に関して不変な一様磁場とAharonov-Bohm磁場を持つシュレーディンガー作用素のスペクトルの解析をさらに推進していきたい。現段階では限られたフックス群の場合にのみ示された定理について、より広い範囲の離散群に関して成立するかを調べていきたい。また、ユークリッド平面の場合には、基本領域を貫く磁束が閾値丁度の時にスペクトルの下端に絶対連続スペクトルが現れたが、上半平面の場合に対応する状況において、いかなるスペクトルが現れるか、非常に興味深い問題であると思われる。この点に関しても考察を進めたい。さらに、一様磁場のときにランダウ準位よりも高エネルギーの部分に現れる連続スペクトルが、離散群の作用で不変なAharonov-Bohm磁場の摂動についていかなる影響を受けるかもとても重要な問題であると思われる。この点についても解析をしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学会や多くの研究会に出席し、今までの研究成果を発表し、たくさんの研究者と議論をしていきたい。そのための旅費として使用していく計画である。また、共同研究者の京都工芸繊維大学峯拓矢氏、昭和大学樋口雄介氏、金沢大学小栗栖修氏との議論も活発に行い、研究を推進していきたい。そのためにも旅費が必要である。また、この分野はスペクトル理論、偏微分方程式、数理物理学、幾何学、整数論等と密接に関係し、活発に研究が進展している分野であるため、常に最新の文献をそろえる必要がある。そのために文献費として使用する計画である。また、本年度は京都大学数理解析研究所共同研究会「スペクトル・散乱理論とその周辺」の代表者であるため、この研究会のためにも使用する予定である。
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Research Products
(2 results)